小松亮太にインタビューするたび、タンゴの現状と未来に危機感を抱いているという話を聞く。だが、それは決して悲観にもとづくものではない。タンゴ演奏家の両親のもとに生まれ、バンドネオン奏者として第一線を走り続けてきた小松の「本当のタンゴを聞いてほしい」というひたむきな願いから出る言葉である。
では「本当のタンゴとは何か?」という問いに対する小松からのひとつの回答が、「オルケスタ・ティピカ」とのコンサートであろう。オルケスタ・ティピカとは、バンドネオンが3〜4人、ヴァイオリンが3人以上(ヴィオラやチェロが加わることも)、ピアノ、コントラバスという、アルゼンチン・タンゴの黄金期を象徴する楽器編成のこと。第二次世界大戦後、好景気に沸いたアルゼンチンでは、このようにゴージャスな編成が「標準=ティピカ」となっていたが、現在では見る機会も少なくなった。
このオルケスタ・ティピカを復活させたいという小松の野望のもとに、バンドネオン奏者の北村聡、早川純、鈴木崇朗をはじめ腕達者たちが集結。アルゼンチン・タンゴの名曲として知られるが、実はウルグアイのマトス・ロドリゲスが作曲した「ラ・クンパルシータ」、小松と共演したこともあるバンドネオンの巨匠、ビクトル・ラバジェンの「ブエノスアイレアンド」など、「ピアソラだけではない」タンゴの名曲を届ける今回のコンサート。ゲストには元宝塚スターの彩吹真央を迎え、小松による編曲でアニメ版『ベルサイユのばら』の主題歌「薔薇は美しく散る」を披露する。TV番組の主題歌やアニメソングなどを通じてタンゴの普及にも努める小松の多彩な魅力を味わえるだろう。
文:原 典子
(ぶらあぼ2024年11月号より)
小松亮太(バンドネオン) & オルケスタ・ティピカ with 彩吹真央(歌)
2024.12/13(金)19:00 J:COMホール八王子
問:八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005
https://www.hachiojibunka.or.jp
12/20(金)18:30 豊中市立文化芸術センター
問:豊中市立文化芸術センターチケットオフィス06-6864-5000
https://www.toyonaka-hall.jp