マリインスキー・バレエ

『愛の伝説』など、4つの名作にみる高貴な華

 変わらぬスタイルを守りながら、進化を続けるマリインスキー・バレエがこの秋来日、4作品を上演する。まず注目したいのは、グリゴローヴィチ振付の『愛の伝説』。グリゴローヴィチというと、ボリショイ・バレエの印象が強いが、その出発点はサンクトペテルブルク。この『愛の伝説』も1961年、当時のキーロフ劇場で初演され、後にボリショイで上演された。マイムによる説明的な表現に頼ることなく、ダンスの力でドラマを展開させていく、グリゴローヴィチ初期の傑作だ。スケールの大きな群舞と叙情性にすぐれた繊細な表現で、自己犠牲、献身、愛、嫉妬、苦悩…さまざまな感情渦巻く激烈な愛憎劇が生成されていく。必見だ。
 やはりこの劇場で初演され、クランコ、マクミランら西側の振付家にも大きな影響を与えた、ラヴロフスキー版の『ロミオとジュリエット』。優美で抑制の効いた振付から、しっとりとした情感がたちのぼっていく。
 一夜限りの贅沢なステージは、マリインスキーにルーツを持つバランシン振付『ジュエルズ』。煌く宝石の輝きに寄せて、フランス、アメリカ、ロシア、それぞれのバレエへのオマージュが捧げられる。
 音楽性に優れたダンサーたちの表現力と妙技を堪能できる作品だ。お家芸『白鳥の湖』については、もはや言葉を重ねる必要はないだろう。
 至宝ロパートキナを筆頭に、充実期のテリョーシキナ、シクリャローフ、ソーモワ、さらに若い世代まで、ダンサーたちがつくりあげる彫琢された究極の美の世界に浸りたい。
文:守山実花
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

『ジュエルズ』11/26(木)18:30 文京シビックホール 
『愛の伝説』11/27(金)18:30、11/28(土)13:00 東京文化会館 
『ロミオとジュリエット』11/30(月)〜12/2(水)東京文化会館 
『白鳥の湖』12/4(金)〜12/6(日) 東京文化会館
3月28日発売
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
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