北九州芸術劇場 × パリ市立劇場 × エスプラネイド – シアターズ・オン・ザ・ベイ × 山海塾 共同プロデュース  山海塾「新作」 世界初演

北九州から世界へ発信、天児牛大のまだ見ぬ世界

会見での天児牛大

会見での天児牛大

『二つの流れ-から・み』 ©Sankai Juku

『二つの流れ-から・み』 ©Sankai Juku

 プレスリリースには、「新作」世界初演、とある。記者発表でも具体的なことはほとんどみえない。主宰にして演出・振付・デザインを手掛ける天児牛大(あまがつ・うしお)の語るところも、ただ、砂があり、もしかしたら、水、そして壁面が、という暗示にとどまっている。わたしたちは五里霧中の状態にいる。とはいえそれはいつものこと。パリ、あるいはリヨンで山海塾の新作公演があるとき、当日までタイトルは知らされない。劇場に行き、ほぼ最小限の情報のみの小さなパンフレットを手にするまで、タイトルもわからずにいたのだ。

36年ぶりに日本国内で世界初演

 新作はずっとフランス発だった。東京で、びわ湖で、北九州で山海塾公演にふれるとき、すでにポスターにもちらしにもタイトルがあり、写真があった。しかし今回は違う。3月の28日と29日、北九州での公演は36年ぶりの極東の列島においての新作初演である。フランス・パリとシンガポール、北九州と山海塾とが共同制作し、その発信地、公共ホールをめぐる法律*の前文のタームをつかうなら「世界への窓になる」のが北九州芸術劇場というわけだ。
 ことしは山海塾が立ちあげられて40年、フランスに拠点をおいてから35年にあたる。天児牛大はといえば、この1月、フランスの芸術文化勲章、最高章コマンドールを受けたばかり。

自らへの問い、不動の姿勢

 特に「節目」を意識して作品をつくるわけではない。天児は言う。これもまたいつものこと。新作についてジャーナリズムは問い掛ける。今度はどんな新しいことを ?、と。しかし天児はいつも淡々と応える。おなじように訥々と、前をむいてやるばかりだ、と。
 何かやって、つぎにこれ、と変わるわけではない。おなじようなところから始める。そしてべつのものになってゆく。疑問や設問が浮かび、自分に対して問い掛けてゆく。「ビルトアップではなくドロップ」。いまは、といえば、不動であること、揺れうごいていることに引っ掛かっている。たとえば――ずっと平衡状態を保っていたのに、「どこかで肺呼吸が始まってしまった、そんな大きな変化が地表の上でおこる」、そんなことを。つくっているときには七転八倒し、右往左往するだろう。もちろんすべての作品が成功する方程式はない…。

非日常の空間

 舞踏手は、演出や振付、そしてデザインすべてを手掛ける天児牛大を含め8人。音楽は加古隆、YAS=KAZ、吉川洋一郎が予定されているが、もしかするとべつに1人加わる可能性もあるらしい。これまでのかたちから類推すると、ピアノを中心とするひびき、多彩なパーカッション、そしてそうしたアコースティックな楽器とは異なったサウンドとが空間を満たすことになろうか。そう、山海塾の公演に足を運び、客席にはいると、その音楽が日常とはすこし異なった時・空間におく。ここから作品は始まっている…との実感がわたし、わたしたちに訪れる。
 当日ぎりぎりまでcreationとはつくり手が迷うもの、迷っていいものだという欧米のかたちを生かし、いま、「新作」の文字はとてつもなく新鮮だ。
文:小沼純一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)

*編集部註:劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(平成24年法律第49号)

3/28(土)18:00、3/29(日)14:00 北九州芸術劇場(中)
問:北九州芸術劇場093-562-2655 
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp