ジェラール・コルステン(指揮) 読売日本交響楽団

芳醇な薫りただよう、匠の技

ジェラール・コルステン ©Marco Borgrreve
ジェラール・コルステン ©Marco Borgrreve
 指揮者のジェラール・コルステンは南アフリカ生まれで、もとはヴァイオリニストで、カメラータ・ザルツブルクやヨーロッパ室内管弦楽団のコンサートマスターを歴任したひとである。指揮者としても、1999年から2005年までイタリアのカリアリの歌劇場の音楽監督をつとめるなど、すでに20年近いキャリアをもっている。コンサートマスターから指揮者に転じた音楽家というと、シャルル・ミュンシュやネヴィル・マリナーが先達としているが、コルステンの場合は、歌劇場での活動に重点をおいてきたことに特徴がある。モーツァルトやシューベルト、ドニゼッティなど19世紀前半までの作品を得意とする一方で、カリアリでは《エジプトのヘレナ》のイタリア初演を指揮するなど、R.シュトラウス作品への愛着も強く、レパートリーは幅広い。
 読売日本交響楽団とは08年に初めて客演、続いて11年に細君のソプラノ歌手エヴァ・メイとともに再登場、その伴奏指揮を見事につとめて喝采を浴びた。今回の定期は、コルステンが愛するモーツァルトの歌劇《劇場支配人》序曲と交響曲第41番「ジュピター」、そしてR.シュトラウスの「英雄の生涯」からなる。じつは、このプログラム、11年3月14日に今回と同じサントリーホールで予定されていた演奏会と、まったく同じ演目となっている。つまり、その3日前におきた東日本大震災のために中止を余儀なくされた公演が、4年ぶりに実現するのだ。その意味をかみしめながら聴いてみたい。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)

第546回 定期演奏会
3/27(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp