【CD】心の女王/ジェズアルド・シックス

 11月に初来日予定の当団体が現在最注目のア・カペラ声楽グループのひとつであることは疑いない。演奏の精度と精妙な表現力に加え、アルバム・コンセプトが毎回卓抜なのだ。本盤は聖母マリアとルネサンス期の“女王”(アンヌ・ド・ブルターニュやアン・ブーリンら)をめぐるジョスカン、ブリュメルらの声楽曲を巧緻により合わせ、困難な運命を生きた女性たちへの追憶と評すべき一枚だ。詳細な解説と共に聴くと、同傾向の詞に付曲した各作曲家の創意が伝わる。そしてパークとクラットウェル=リードの現代作品が、強い痛みの響きを差し込み、テーマが現代にも通じることを示唆する。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2024年9月号より)

【information】
CD『心の女王/ジェズアルド・シックス』

アントワーヌ・ブリュメル:あなたの保護に向かって/ジョスカン・デ・プレ:この世の道理を超えて/ロワゼ・コンペール:退屈し/オワイン・パーク:マリアのための祈り/アントニウス・ディヴィティス:この娘は美しい/ニンフェア・クラットウェル=リード:もう喜びはなく 他

ジェズアルド・シックス
オワイン・パーク(指揮、バス) 他

Hyperion/東京エムプラス
JCDA 68453 ¥3500(税込)