N響名曲コンサート2024

フランスの名匠が魅せる管弦楽サウンドの色彩

左:パスカル・ロフェ ©N.Ikegami
右:ジョナタン・フルネル ©Marco Borggreve

 9月恒例の「N響名曲コンサート」、今年はフランスもの中心のおしゃれなプログラムで実施される。

 指揮のパスカル・ロフェは、現代音楽のスペシャリスト集団、アンサンブル・アンテルコンタンポランの指揮などを経て、2014年から22年までフランス国立ロワール管の音楽監督を務めた後、現在はクロアチア放送響の音楽監督の任にある。近現代の複雑なスコアを色彩感豊かに表現してくれる手練れだ。

 演奏会はイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンの歌劇《ピーター・グライムズ》より「4つの海の間奏曲」で幕を開ける。ある漁師の弟子の死をめぐって起こる村の騒動を描いたオペラから、様々な海の姿をとらえた間奏曲を集めた。

 続くラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」は第一次大戦で右手を失ったピアニストのために書かれ、グロテスクな楽想やジャズ風のリズムが混ざり合った才気あふれる作品。独奏のジョナタン・フルネルは21年にエリザベート国際で優勝した俊英だ。

 フォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」はメーテルリンクの幻想的な戯曲に付曲したもので、フルートが雅やかな旋律を歌う「シシリエンヌ」は単独でも演奏される名曲だ。そして最後は夜明けから嵐に至る大海原の変化をとらえたドビュッシーの交響詩「海」。プログラムのはじめと終わりのお題を揃えたあたりにもフランス人らしいエスプリを感じる。N響の精緻なアンサンブルと相まって、それぞれの曲を豊かな情景喚起力で描きだしてくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年9月号より)

2024.9/9(月)19:00 サントリーホール
問:N響ガイド0570-02-9502 
https://www.nhkso.or.jp