【CD】フォニックス・マリンバオーケストラ IV―愛と祈り/上野信一&フォニックス・レフレクション

 

マリンバのトレモロには木のぬくもりがある。それが合奏体になると無数の音の粒が混ざり合い、しっとりとした重みをもつ当たりの柔らかいハーモニーへと発展する。その響きは優しさや癒しを含み、聴き進めるごとに「愛」や「祈り」というアルバムのテーマと共鳴して聴き手の懐に入っていく。讃歌やミサ曲、歌曲などに管弦楽曲からの編曲ものを配しバランスよく構成、曲目・演奏共に規範的なものと言えよう。アルバム中ほどに収録された「モルダウ」では水面の反射を表現するグロッケンや、激しい流れをダイナミックに活写するティンパニやシンバルが打楽器オーケストラの可能性を感じさせる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年9月号より)

【information】
CD『フォニックス・マリンバオーケストラ IV―愛と祈り/上野信一&フォニックス・レフレクション』

チャイコフスキー:弦楽のためのセレナーデより第1楽章/モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス/シベリウス:フィンランディア讃歌/スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より〈モルダウ〉/メンデルスゾーン:「6つの歌」より〈森への別れ〉(以上奥定美和編) 他

上野信一(指揮)
フォニックス・レフレクション

コジマ録音
ALCD-7303 ¥3300(税込)