高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

メモリアルイヤーに聴く名匠渾身の「わが祖国」

高関 健 ©大窪道治

 マエストロ高関健とスメタナ「わが祖国」。彼はチェコ・フィルの演奏に触れて以来この曲を愛し、指揮者として節目の度にとりあげてきた。2015年の東京シティ・フィル常任指揮者の「就任披露演奏会」に選んだ演目も「わが祖国」。このとき、誤解を恐れずに言えば、想像をはるかに超える高水準かつ感動的な名演が実現して、彼らの明るい未来を確信させるパフォーマンスに会場も沸いた。果たして、それから9年、楽団の機能面は飛躍的に向上、内容も充実、なにより心に深く訴える演奏が連続し、聴衆の熱い支持を得るに至っている。

 高関と同楽団は、21年のフェスタサマーミューザ KAWASAKIで「わが祖国」を再演しており、やはりすばらしい熱演で絶賛された。その際のインタビューでは、定期ではなるべく同じ演目を選ばないようにしていると語っていた。その高関が、スメタナ生誕200年の今年、10月にさらなる再演を決断。コロナ禍中の川崎での同作はもちろん大切な機会だったが、記念の年の定期、しかも就任公演時と同じ東京オペラシティでの再演は、彼らの9年半の総決算ともなる、覚悟の選曲のはず。

 高関は若い頃にチェコ・フィル等の同作録音を聴きまくり、慣例的な譜面の改編などを聴き取り、逐一スコアにメモしてきたそうで、それらを踏まえた「高関版」というべき独自の譜面も用意してきた。理知的にして熱狂的。耳のきこえなくなったスメタナが、母国チェコの独立への思いを詰め込んだ大傑作。その神髄に迫る、アニバーサリーを象徴する名演がここに実現する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年8月号より)

第373回 定期演奏会
2024.10/3(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp