生誕200年を迎えたブルックナーによる交響曲全11曲、異稿も含めた18バージョンを録音する大型プロジェクト。その最終リリースとなるこのアルバムでは最初と最後の交響曲(ともに異稿はなし)を収録、無事完走を迎えることに。ポシュナーの演奏はスマートな語り口でバランスを整えつつも、同時にオーケストラのローカルさを引き出してくれる。テンポの揺らし方も独特で、第9番では神がかった荘厳さよりも、素朴で人間味あふれる姿を映しだす。一方、交響曲ヘ短調の演奏から立ち現れるのは、あたかもシューマンのスタイルを受け継いだような若々しいブルックナーだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年8月号より)
【information】
CD『ブルックナー:交響曲第9番&交響曲ヘ短調/マルクス・ポシュナー&リンツ・ブルックナー管』
ブルックナー:交響曲第9番、交響曲ヘ短調
マルクス・ポシュナー(指揮)
リンツ・ブルックナー管弦楽団
Capriccio/ナクソス・ジャパン
NYCX-10477(2枚組) ¥2970(税込)