おおたかの森スーパー・クィンテット ― 当代最高の名手たちが名曲「ます」を弾く ―

必聴!流山に奇跡の五重奏、現る!

左より:岡本誠司/佐々木亮(c)Taisuke Yoshida/横坂 源/幣 隆太朗/秋元孝介

文:鈴木淳史

 東京都心から30分ほど。郊外にあるホールが、好企画を続々と出してくる時代になった。青葉台のフィリアホール、鶴見のサルビアホール、老舗では吉祥寺の武蔵野文化会館などなど。
 そんなホールに、新しい仲間が加わった。2019年に開館したスターツおおたかの森ホールが、今年4月から指定管理者が代わり、最初の自主企画を行うという。最寄り駅は、つくばエクスプレスで秋葉原から最短25分の「流山おおたかの森」駅。そこから徒歩1分。駅北口に直結した、利便性のいいホールだ。

 このホールがあるのは、千葉県流山市。6年連続全国トップの人口増加率を誇る自治体である。都心に直通するつくばエクスプレスが開通して以来、大きな躍進を遂げた。「母になるなら、流山市」「都心から一番近い森のまち」のキャッチフレーズを掲げ、子育て世代に人気の町として注目を浴びている。
 スターツおおたかの森ホールは、側部と客席後部にバルコニー席を持つ、494席からなるシューボックス型。多目的ホールとして計画されたが、永田音響設計が音響設計全般を監修するなど、音楽ホールとしてのポテンシャルも高い。

 新しく指定管理者となったスターツ・シアターワークショップ共同事業体が、最初に手がける公演は、7月21日の「おおたかの森スーパー・クィンテット―当代最高の名手たちが名曲『ます』を弾く」だ。
 「当代最高の名手」というタイトルに偽りなく、豪華なメンバーが集った。ミュンヘン国際音楽コンクール優勝などの数々の経歴をもち、世界各地で活躍するヴァイオリンの岡本誠司、NHK交響楽団の首席奏者を務めるヴィオラの佐々木亮、国内トップのチェロ奏者にして幅広いレパートリーで魅了する横坂源、SWR交響楽団の奏者であり、ソリストとしても人気爆発中のコントラバス奏者、幣隆太朗。そして、葵トリオのピアニストとして脚光を浴びた秋元孝介。

 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスにピアノ。この変則的な編成といえば、やはりシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」だ。歌曲「ます」の旋律が第4楽章で変奏曲の主題として登場する名曲である。そして、同編成で書かれたヴォーン・ウィリアムズのピアノ五重奏曲がプログラムされているのがうれしい。
 交響曲作曲家として名高い英国の作曲家が、31歳のときに書いた全3楽章からなるピアノ五重奏曲だ。暗い情熱うずまく第1楽章、コラール風の主題が印象的な第2楽章、終楽章は厳かに進み、高揚していく変奏曲形式。「ます」同様、コントラバスが入ることで、よりダイナミックなサウンドがホールを響かせよう。名手たちが、新しい時代を切り拓く一日になるはずだ。
 今年9月の主催公演は、葵トリオによるベートーヴェン、ツェムリンスキー、メンデルスゾーンによるプログラムを予定している。○○の殿堂、いつかそんなふうに呼ばれるような個性的なホールに育ってくれることを期待したい。

上段左より:岡本誠司/佐々木 亮(c)Taisuke Yoshida/横坂 源(c)Takashi Okamoto
下段左より:幣 隆太朗/秋元孝介

おおたかの森スーパー・クィンテット
― 当代最高の名手たちが名曲「ます」を弾く ―

2024.7/21(日)15:00 スターツおおたかの森ホール


出演
岡本誠司(ヴァイオリン)
佐々木 亮(ヴィオラ)
横坂 源(チェロ)
幣 隆太朗(コントラバス)
秋元孝介(ピアノ)

曲目
ヴォーン・ウィリアムズ:ピアノ五重奏曲 ハ短調
シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 D667「ます」

問:スターツおおたかの森ホール04-7186-7638
https://starts-otakanomorihall.com