21歳の大器が届ける、力強くも美しいグリーグの傑作ソナタ
注目の若手演奏家を紹介する「高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズ」。13回目のステージにはヴァイオリンの前田妃奈が登場。
特別特待奨学生として東京音楽大学に学ぶ現役学生ながら、2022年には第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝を飾り、一躍注目の的となった気鋭のヴァイオリニストである。同コンクールのファイナル・ステージでは完璧な技術のもとオーケストラと渾然一体となって力強く音楽を弾き進め、圧倒的な演奏で満場の客席を熱狂の渦に包み込んだのが印象に残る。すでに関西フィル、東響、新日本フィルほかのオケとも共演を重ね、こうした豊富な演奏経験が彼女の音楽作りに厚みをもたらしているといえるだろう。
今回の公演で取り上げられるのはグリーグのヴァイオリン・ソナタ全3曲。いずれも独特の味わいを持つ名作ながら、最初の2作が20代前半に書かれたのに対し、第3番は40代円熟期の作品であり、とくにその第2楽章における研ぎ澄まされた美しさはこの時期の作曲者が辿り着いた一つの境地を示していよう。前田が作曲者の人生に寄り添い、これらの作品をどう消化して聴かせてくれるかが楽しみである。共演はリヨン国際ピアノコンクール第1位、ミュンヘン国際音楽コンクール第3位の実績を持ち、国内外のオケとの共演や音楽祭出演を通じて活躍する新進気鋭のピアニスト久末航。
文:近松博郎
(ぶらあぼ2024年7月号より)
2024.8/4(日)13:30 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/