平日夜にフレッシュな“癒しの声”を
近未来の音楽界を引っ張るすぐれた若手声楽家による、みずみずしい歌曲やオペラ・アリアを味わえる「アプリコうたのナイトコンサート」。今回は東京藝大大学院に在学中のコロラトゥーラ・ソプラノ、吉田早奈恵が登場する。
すでに第4回K声楽コンクール、第39回かながわ音楽コンクール声楽部門プロフェッショナルの部で第1位を獲得している吉田は、周囲がこぞって認める大器。透明感があって、同時にぬくもりが感じられる叙情的な声を操り、表情豊かに歌い上げる。また、ストレスなく一気に駆け上がる超高音には、聴き手の気分を晴らしてくれるような爽快感がある。これから本格的に訓練を重ねることで、どこまで伸びていくか、とても楽しみな逸材である。
ドビュッシーの〈星の夜〉や〈パントマイム〉では、透明な声が活かされるだろう。小林秀雄の〈すてきな春に〉では、持ち前の叙情性と美しい日本語が味わえるはず。もちろん、アリアも用意されている。ヴェルディ《リゴレット》の〈慕わしい人の名は〉では、美しくみずみずしいレガートを、ドリーブ《ラクメ》の〈若いインドの娘はどこへ行く〉では、高音域での鮮やかなコロラトゥーラを堪能できる。東京藝大大学院修了後、パリやベルリンで研鑽を積んだ木邨清華のピアノが、吉田の歌をさらに引き立ててくれるはずだ。
平日午後7時からの休憩なしの60分。仕事帰りの夕食前に手軽に楽しめる時間に、近未来のスターを一足先に聴けるのがうれしい。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2024年6月号より)
2024.6/12(水)19:00 大田区民ホール・アプリコ
問:大田区民ホール・アプリコ03-5744-1600
https://www.ota-bunka.or.jp