R.シュトラウスがモーツァルトの音楽に若い頃から格別の関心を寄せていたことは広く知られている。当該盤は両者の歌曲をそれぞれグループ化してカップリングした一般的な歌曲集ではなく、異なる時代の作曲家の音楽を巧みに組み合わせて独自に構成したアルバムとなっている。通して聴くと全く違和感がないことに加え、両者を組み合わせることによって新たな意味内容を創出した、高度なコンセプト・アルバムとなっていることに驚かされる。高い透明感を持って歌い上げるドゥヴィエルに加え、ポルドワのピアノが非常に印象的。歌唱に「寄り添う」伴奏ながら、常に音楽に明晰さを与えている。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年6月号より)
【information】
CD『モーツァルト&R.シュトラウス:歌曲集 /サビーヌ・ドゥヴィエル』
モーツァルト:おいで いとしのツィターよ、子供の遊び、孤独に寄す、すみれ、クローエに、夢に見る姿、夕べの想い/R.シュトラウス:夜、なにも、森のしあわせ、明日!、アモール、芥子の花、木づた、万霊節 他
サビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ)
マチュー・ポルドワ(ピアノ)
ヴィルデ・フラング(ヴァイオリン)
ERATO/ワーナーミュージック・ジャパン
5419.794886 ¥オープン価格