ラデク・バボラーク(ホルン/指揮)

“100年に一人”の名手の全貌を知る

 異次元の美音と技巧を誇る歴史的ホルン奏者ラデク・バボラークは、2009年にベルリン・フィルを退団後もますます快調。「ソロ、室内楽、指揮、教育…と音楽に関する全てに100パーセント尽力」している。彼はこの2月、すみだトリフォニーホールの『スーパー・ソリスト meets 新日本フィル』に出演。「リサイタル」(ピアノは清水和音)と「コンチェルト&指揮」を一夜で披露する。自身「私にとっても新しい経験。とても楽しみにしています」と語る注目の公演だ。
 前半のリサイタルには、ベートーヴェン、シューマン、ブラウンの作品が並ぶ。
「古典派、ロマン派、20世紀の3つの時代におけるホルンの音をご紹介します。まずピアノとのデュオ作品では最高傑作と確信しているベートーヴェンのソナタ。これは私のチェコの実家からほど近い所で生まれた同郷の名奏者、ジョヴァンニ・プントのための作品でもあります。次いでホルンを熱愛したシューマンの作品から、オリジナル曲ではなく、まだ日本で演奏していないオーボエのための『3つのロマンス』を、あえて選びました。またブラウンは偉大な作曲家であるにもかかわらず、あまりに演奏されていません。実にもったいないですし、この夏に亡くなったこともあって、紹介したいと考えました」
 ブラウンの曲は興味深い。
「ホルンの魅力を効果的に表現できるソナタです。技術的な面白さだけでなく、抒情的、感傷的な面もある作品。ホルンの様々な魅力が盛り込まれていますので、お客様にも喜んでもらえると思います。加えてピアノ・パートが素晴らしく、清水和音さんくらい指が回る奏者でないと弾けないほどヴィルトゥオーゾ的。その点も期待してください」
 後半は、まずマルティヌーの「サンダーボルト P-47」の指揮。
「チェコの曲を入れたくて選びました。タイトルはアメリカの飛行機の名。戦闘機を描写した音楽で、当時の優秀な技術に対するオマージュ作品のひとつです。ドラムが終始飛行機の音を表わすエネルギーに溢れた曲で、映画音楽を彷彿とさせます」
 そしてグリエールの協奏曲の“吹き振り”。同曲は、2012年のN響定期でも演奏し、同年N響と共演した「最も心に残ったソリスト」で第1位を獲得している。
「ホルン奏者にとっては、R.シュトラウスの協奏曲と並ぶ20世紀の重要曲。ホルンの全てが含まれていますし、堂々たるカデンツァもあり、ラフマニノフのピアノ協奏曲に似た雰囲気をもっています。それに今回は、新日本フィルのような優れたオーケストラで、自分の解釈を表現できるのが嬉しいですね」
 ちなみに“吹き振り”は「もう慣れました。この場合あまり指揮をしない人もいますが、私は積極的に振ります」とのこと。スーパー音楽家の全貌を一挙に堪能できる、この稀少な機会を逃してはならない。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

スーパー・ソリスト meets 新日本フィル ラデク・バボラーク(ホルン/指揮)
2/13(金)19:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
http://www.triphony.com