昨年に続く紀尾井ホールでの葵トリオのライブ録音は、シューマンの晴朗な第2番と、彼が「天才だ」と激賞して世に出したショパンの佳品という意義深い組み合わせ。卓越した個の力と完璧な一体感の両立はもはや言うまでもないが、当盤ではショパンにおける秋元のピアノの活躍ぶりに注目。この作曲家ならではの華やかな美音や技巧を聴かせつつ、一瞬で弦の音に溶け込み、その切り替えを巧みにこなす職人芸。そこに乗りながら、熱くも凛とした音でリードする小川のヴァイオリン、豊かな低音とほれぼれする歌を奏でる伊東のチェロが加わる魅力たるや。トリオの理想形にまた近づく。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年4月号より)
【information】
CD『葵トリオ《ライヴ at 紀尾井ホール 2023》II』
シューマン:ピアノ三重奏曲第2番/ショパン:ピアノ三重奏曲
葵トリオ
【秋元孝介(ピアノ) 小川響子(ヴァイオリン) 伊東裕(チェロ)】
収録:2023年2月、紀尾井ホール(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-8004 ¥2750(税込)