若き日にプロコフィエフの初期ピアノ作品の録音が高く評価され、プロコフィエフ元夫人よりACCディスク大賞を贈られるという受賞歴を持つエル=バシャ。第2次大戦下で作曲された「戦争ソナタ」(第6・7・8番)の録音が、満を持して昨年5月に東京で行われた。エル=バシャらしい極めて明晰な解釈が隅々まで行き届いており、抑制のきいた演奏表現が逆説的に作品の生命力を輝かせる。程よくブレーキをきかせつつ巧みなアクセル使いで走り抜け、表現としての無骨さと、エレガントな滑らかさのコントラストはまさに熟練のピアニズムである。
文:飯田有抄)
(ぶらあぼ2024年4月号より)
【information】
SACD『プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番、第7番、第8番/アブデル=ラーマン・エル=バシャ』
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番〜第8番
アブデル=ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00043 ¥3740(税込)