高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Mastersシリーズ vol.7
伊藤 恵 ピアノ・リサイタル

レジェンドがいま改めて向き合う、ベートーヴェン後期三大ソナタ

©武藤 章

 高崎芸術劇場の芸術監督、大友直人がプロデュースする「T-Mastersシリーズ」は、日本を代表する名手を招き、響きのよい音楽ホールで“円熟の極み”を味わう演奏会。

 2月25日のvol.7には、名ピアニストであり、東京藝術大学教授として多くの優れた後進を育てる伊藤恵が登場する。しかも演奏するのは、若き日にザルツブルクとハノーファーで学び、ドイツものを得意とする彼女が特別な存在として向き合い続けるベートーヴェン。その後期三大ピアノ・ソナタという、究極のプログラムが用意されている。

 かつてリサイタルで第32番のピアノ・ソナタを演奏し終えた伊藤は、「私は写経をしたことがないけれど、このソナタを弾くのは、まるで写経をしているような感じ」と話していた。今回はそこへと続く第30番、第31番も併せるという、ベートーヴェンのピアノ音楽の“終着点”に至る道も取り上げることになる。真摯な演奏家である彼女のことだから、大きな決意、意気込みとともに舞台に立つに違いない。

 やさしさ、あたたかさと力強さを持ち、さまざまな空気を生み出す伊藤のピアノは、どんな円熟のベートーヴェンの姿を描きだすのだろうか。そして、常に冒険心を忘れず前進しつづけるベテランが、このエネルギーあふれるマスターピースから何を見せてくれるのか、どこまでその精神世界を突き詰めるのか。まさに“円熟の極み”といえる奏者とプログラムの組み合わせに、期待が高まる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2024年1月号より)

2024.2/25(日)15:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900 
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/