デビュー20周年の横山幸雄のメニューは盛り沢山

 昨年のショパン・イヤー(生誕200年)では、世界各地で膨大な数のショパンの演奏会が開催されたであろうが、そのなかでも横山幸雄が5月に行った、ショパンの番号付きのピアノ独奏全作品(166曲)を年代順に暗譜で引き通したコンサートは「偉業」に数えられるのは間違いない。実に16時間に及んだこのマラソン・コンサートはギネス記録に認定されたので、おそらく海外でも話題になったに違いない。
 さて、今年がデビュー20周年にあたる横山は、自ら打ち立てたギネス記録に飽き足らず、今度は何とショパンが遺した未出版のソロ作品を含む全212曲の完全奏破に取り組むという。この破格のリサイタルは「ALL OF CHOPIN 212〜The Dream Challenge」というタイトルで、ゴールデンウィーク中の5月3日(火・祝)に東京オペラシティコンサートホールで行われる。コンサートは4部構成、その中でさらに3パートに分割されている。第1部(60曲):朝8時スタート、第2部(55曲):昼12時30分スタート、第3部(63曲):夕方5時30分スタート、第4部(34曲):午後10時スタート(最終パートは深夜0時50分開始)。ショパンと横山幸雄の魅力を丸ごと堪能できるチャンスだ。
問:TOKYO FM事業部03-3221-0080
 ショパンの話題でもうひとつ。横山はパリで見つけたプレイエル社1910年製のオリジナルピアノによる「ピアノ独奏曲全曲演奏会」を、自身教鞭をとる上野学園の石橋メモリアルホールにて開催中。今年の10月までの間に行われる全12回のシリーズで、すでに6回まで終了している。3月8日(火)に行われた会見の席で横山は「ショパンが愛したプレイエルのピアノで全曲演奏ができることは嬉しい。今年はショパンが亡くなった年齢になった。この時期にショパンを見渡せることは大きな喜び」などと語り、その後にノクターン第1番変ロ短調などを披露した。プレイエルのピアノは音量がデリケートながら繊細な色彩感が大きな持ち味で、精密な音響機構を誇る上野学園石橋メモリアルホールとの相性はすこぶるよい。プレイエルのピアノを聴いたことのない方にはぜひ一聴をおすすめしたい。
問:上野学園石橋メモリアルホール03-3843-3043
 なおキングレコードは横山のプレイエル・ピアノによるショパンのシリーズの共同プロジェクトとして、この3月23日から3ヵ月ごとに3タイトルずつ計12枚のCDをリリースしていくことを発表した。音源はライヴとセッションの両方を採用する。
 来年2012年にはやはりオール・ショパン・プロでのリサイタルを横浜みなとみらいホールで開催。「幻想即興曲」「別れのワルツ」「バラード第3番」「スケルツォ全4曲」「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」「タランテラ」「子守歌」「舟歌」というまさにショパン芸術のエッセンスを凝縮したような選曲となっている。こちらはモダンピアノでの演奏。
 今度はフランツ・リスト。生誕200年の今年、多くのピアニストやオーケストラがリスト作品にチャレンジしているが、抜群のテクニックを誇る横山にとってもリストは大きな目標のひとつである。9月11日(日)には東京オペラシティコンサートホールで、デビュー20周年記念東京公演として、オール・リスト・プログラム(曲目は後日発表)によるリサイタルを開く。
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
 大阪のいずみホールでは今年の9月から3ヵ月にわたり、「リスト生誕200年記念シリーズ」を開催する。ケマル・ゲキチ、ボリス・ベレゾフスキー、ヴァレリー・アファナシエフ、ジャン=マルク・ルイサダ、ゲルハルト・オピッツなど、錚々たる面々が集まり妙技を披露するが、11月の演奏会に横山幸雄が登場、ピアノ・ソナタロ短調ほかに取り組む予定だ。
問:大阪/いずみホール06-6944-1188
 このほかにも国内オーケストラとピアノ協奏曲の大曲を共演する。5月14日(土)にペリー・ソー(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団とモーツァルト:ハ短調K.491、6月24日(金)に三ツ橋敬子(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団とベートーヴェン:第5番「皇帝」、10月15日(土)に大友直人(指揮)東京交響楽団とラフマニノフ:第2番。来年2012年に入ってからは1月29日(日)に梅田俊明(指揮)大阪センチュリー交響楽団と「4大コンチェルト」(ショパン:第1番、ラフマニノフ:第2番、ベートーヴェン:第5番『皇帝』、チャイコフスキー:第1番)を一晩で。さらに2月には20周年記念東京公演の2回目で「コンチェルトの夕べ」(仮)としてチャイコフスキー:第1番、ラヴェル:ト長調、ラフマニノフ:第3番を一挙に演奏するという大企画が控えている(指揮者とオーケストラは後日発表)。