森山未來『プルートゥ PLUTO』

ジャンルを超えたエンターテイメント出動!

 2014年、ダンスフェスティバル“Dance New Air”で上演された『談ス』、あるいは、東京都現代美術館でのインバル・ピント&アブシャロム・ポラックダンス・カンパニー『ウォールフラワー』で、森山未來の踊りに目を見張った人は少なくないのではないだろうか。

ラルビとタッグを組む新作

 もともと身体表現でのセンスが光る人で、スティーブン・バーコフ演出『変身』、インバル&アブシャロム演出・振付・美術『100万回生きたねこ』、シディ・ラルビ・シェルカウイ振付『テ ヅカTeZukA』といった大舞台で、その才能は発揮されていた。
 一方、ダンサーたちとのSTUDIO MODERN MILLIE DANCE LIVEや、きゅうかくうしお vol.0『素晴らしい偶然をもとめて』といったコンパクトな舞台では、踊りへの変わらぬ情熱を感じ取ることもできた。

ラルビとタッグを組む新作

 その彼が、13年10月から1年間、文化交流使として主にイスラエルのインバルたちの下で活動し、よりタフでオープンなパフォーマーとなって帰ってきたのだ。そして15年1月、新作『プルートゥ』で、彼は『テ ヅカTeZukA』に続いてラルビとタッグを組む。
『プルートゥ』とは手塚治虫の漫画『鉄腕アトム 地上最大のロボット』を、漫画家の浦沢直樹とストーリー共同制作者の長崎尚志がリメイクした長編漫画。その舞台化というユニークな企画は、アトム役を演じる森山自身が実現させたものだという。
「僕とラルビとBunkamuraさんで何かやろうという話は前からあったのですが、多忙なラルビとタイミングを合わせるのが難しくて。僕が文化交流使をしている間にベルギーで彼の新しい作品が開幕するというので、プレミアを観に行って挨拶したんです。そうしたらその後、ちょうど彼のスケジュールが空き、この公演が決まりました。メールや電話ではなく、実際に顔を見せてお互いの存在を認識し合うことが大事なんだと、改めて感じました」
 これは、パフォーマーと観客とがその日限りの上演に立ち会う生の舞台にも、通じる話なのではないだろうか。

舞台ならではの面白さ

「そうですよね。僕は映像ももちろん好きですが、何を見せるかは監督が決めるもので、視点は自ずと絞られていく。でも舞台では、舞台上のキャッチボール、そして舞台と客席のキャッチボールが楽しめる。そこが良いのでしょうね」
 森山のほか、永作博美、柄本明、吉見一豊、松重豊、寺脇康文らが出演者に名を連ねるこの作品は、いわゆるダンス公演ではない。ラルビのクレジットも「演出・振付」だ。一体、どんな作品ができあがるのか?
「まだまだ今は素材作りの段階です。ラルビは、身体だろうが音楽だろうが、すべてを素材としてフラットに扱う。一個一個の情報なりビジュアルなり、その本質を受け止めて、どう組み合わせるか?といった遊び方をする人なんです。そういう作業ってコンセプチュアルにもなり得るけれど、彼は同時にエンターテインメントが好きでもある。彼をピックアップした振付家アラン・プラテルが徹底的に行くところまで行っちゃう方で、僕はプラテルもメチャクチャ好きですが、最終的に作品をポップなものに昇華させるラルビは、とても信頼できる存在です」
 表現者としてのセンサーに磨きをかけた森山が信頼を寄せる相手と作り上げる舞台。しかと見届けたい。
取材・文:高橋彩子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

2015.1/9(金)〜2/1(日) Bunkamuraシアターコクーン 
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999
2015.2/6(金)〜2/11(水・祝) 森ノ宮ピロティホール 
問:キョードーインフォメーション06-7732-8888 
http://www.pluto-stage.jp