千代田区オペラ 木下牧子作曲 《不思議の国のアリス》

本格的な舞台で味わう最高のファンタジー

左より:岩崎 香/山本耕平/平野桂子

 昼下がり、7歳のアリスがおかしな白ウサギを追いかけて深い穴に落ちると、そこは不思議の国だった——。ルイス・キャロルの著名な童話を原作に、木下牧子が自身初のオペラとして作曲した《不思議の国のアリス》(2003年初演)。これがじつに本格的なオペラなのだ。全2幕9場は原作のプロットに忠実にしっかりと再構成され、音楽はテンポよく、ピアノを含む八重奏のアンサンブルは色彩豊かで、ソロのパートは聴きやすい。要は、大人もじっくりと鑑賞するに堪える作品なのである。

 そうは言っても、童話ならではの筋の明快さとワクワク感は、魅力的な音楽の力を得ていっそう強調されているから、大人も子どももアリスと一緒に、不思議の国の世界を存分に冒険できる。しかも歌手陣には岩崎香、山本耕平、奥秋大樹ら旬の名が並び、指揮はイタリアやドイツでの経験が豊富な平野桂子。子どもは最高の音楽体験ができ、大人は日常を忘れてどっぷり浸れる。だれにとっても濃い時間が約束されている。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2024年1月号より)

2024.1/13(土)、1/14(日)
【第1部】各日14:00 【第2部】各日19:00 日経ホール
問:奏楽会03-4570-6731 
https://www.chiyodaopera.jp
※第1部と第2部でキャストが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。