長尾洋史のピアニズム・シリーズ第6弾はフォーレ。長尾のピアノは的確な技巧で、フォーレの織り成す精緻なテクスチュアを、魅力的に聴かせてくれる。舟歌第5番は、ダイナミックで複雑なリズムの中に、様々な音色のパレットが交錯し明滅する。舟歌第6番では、リズムのたゆたいの中に繊細な表情が生かされる。ヴァルス＝カプリス第3番は、即興的な楽想があてどなく転調していく主部に対して、中間部のひそやかなメロディが美しく、鐘の響きがチラチラと煌めく。夜想曲第6番は、美しい旋律と自在な転調がフォーレ独自の世界を作り出して感銘深い。最晩年の夜想曲第13番は、つつましい味がある。
文：横原千史
（ぶらあぼ2023年12月号より）
【information】
CD『ピアニズム6 フォーレ：ピアノ作品集／長尾洋史』
フォーレ：3つの無言歌、舟歌第3番、同第5番、同第6番、ヴァルス＝カプリス第3番、主題と変奏、即興曲第4番、夜想曲第6番、同第7番、同第13番
長尾洋史（ピアノ）
録音研究室（レック・ラボ）
NIKU-9055 ￥3080（税込）