第92回 日本音楽コンクールの本選が、10月25日から30日にかけて東京オペラシティ コンサートホールで行われ、各部門の入賞者が発表された。
25日に行われたチェロ部門では、北村陽が第1位および聴衆賞、全部門を通じて最も印象的な奏者・作品に贈られる増沢賞を受賞した。北村は2004年、兵庫県生まれの19歳で、現在は桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースに在学中。今年9月にオーストリアで行われたヨハネス・ブラームス国際コンクール、若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール(2017)優勝、22年ハチャトゥリアン国際コンクール第2位など、海外の国際コンクールでの実績も重ねている。
◎チェロ部門 最終結果
〈課題曲〉ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
第1位・岩谷賞(聴衆賞) 北村陽
第2位 柴田花音
第3位 泉優志
入選 佐山裕樹
(共演:角田鋼亮指揮、東京フィルハーモニー交響楽団)
26日に行われた声楽部門の優勝は、メゾソプラノの山下裕賀。京都府出身で東京藝術大学声楽科、同大学院修士課程を修了。すでにNISSAY OPERA2021・2022に出演するなど活躍の場を広げており、オペラ以外の分野でも、今年12月に開催される「読響《第九》」などでソリストに抜擢されている。
◎声楽部門 最終結果(同位は演奏順)
第1位・岩谷賞(聴衆賞) 山下裕賀(メゾソプラノ)
♪チャイコフスキー:《ジャンヌ・ダルク》より〈森よ、さようなら!〉
♪シュトラウス:《ナクソス島のアリアドネ》より〈お許しください!〉
第2位 徐大愚(バスバリトン)
♪ヴェルディ:《シモン・ボッカネグラ》より〈悲しい胸の思いは〉
♪ドニゼッティ:《愛の妙薬》より〈さあ、皆の衆、聞いた、聞いた〉
第3位 砂田愛梨(ソプラノ)
♪ヴェルディ:《椿姫》より〈不思議だわ!… ああ、そはかの人か ~花から花へ〉
♪プッチーニ:《つばめ》より〈ドレッタの美しい夢〉
入選 市川敏雅(バリトン)
♪メンデルスゾーン:《エリア》より〈もう十分です〉
♪ヴェルディ:《ドン・カルロス》より〈カルロス聞いてください ~ああ!私は死んでいきます〉
入選 奥秋大樹(バス)
♪グノー:《ファウスト》より〈金の子牛の歌〉
♪ヴェルディ:《アッティラ》より〈ローマを前に我が魂は〉
(共演:現田茂夫指揮、東京フィルハーモニー交響楽団)
27日に行われたホルン部門では、吉田智就が第1位となった。吉田は東京音楽大学器楽科を卒業し、現在は同大学大学院に在学中。昨年開催された第20回東京音楽コンクール金管部門でも優勝している。ホルン部門の本選は、プログラミングのセンスも評価対象とされ、吉田は、A.アボット「カッチア風に」、A.マルコム「無伴奏ホルンのための幻想曲 op.88」、E.イウェイゼン作曲ホルン・ソナタの3曲を演奏した。
◎ホルン部門 最終結果(同位は演奏順)
第1位・岩谷賞(聴衆賞) 吉田智就
♪A.アボット:カッチア風に
♪A.マルコム:無伴奏ホルンのための幻想曲 作品88
♪E.イウェイゼン:ホルン・ソナタ
第2位 佐藤俊輝
♪エサ=ペッカ・サロネン:ホルンのための演奏会用練習曲
♪R.シュトラウス:ホルン協奏曲第2番
第3位 松原秀人
♪M.ポート:伝説
♪P.デュカ:ヴィラネル
♪E.コスマ:ソナチネ
入選 多田凌吾
♪I.モシェレス:主題と変奏 作品138b
♪R.シュトラウス:ホルンとピアノのためのアンダンテ TrV 155
♪Y.ボウエン:ホルン・ソナタ 変ホ長調 作品101
入選 宇名根叶多
♪R.シューマン:アダージョとアレグロ
♪B.クロル:ラウダツィオ
♪J.ヴィネリ:ホルン・ソナタ
28日に行われたピアノ部門では、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を披露した鈴木愛美が優勝に輝いた。鈴木は2002年大阪府生まれ。大阪府立夕陽丘高等学校音楽科を経て、現在は給費奨学生として東京音楽大学4年次に在籍。今年8月には、ピティナ・ピアノコンペティション特級でグランプリを受賞している。
◎ピアノ部門 最終結果
第1位・岩谷賞(聴衆賞) 鈴木愛美
♪ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58
第2位 稲積陽菜
♪ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
第3位 朴沙彩
♪ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
入選 重松良卓
♪ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
(共演:大井剛史指揮、東京交響楽団)
29日に行われたヴァイオリン部門では、水野琴音が第1位に、聴衆賞には第2位の中嶋美月が選ばれた。水野は青森県出身。現在、東京藝術大学2年次に在籍中。今年8月の第21回東京音楽コンクールの弦楽部門では第2位および聴衆賞を受賞するなど、国内のコンクールで頭角を現している。
中嶋は、2004年山梨県出身。東京音楽大学付属高校を経て、現在は東京音楽大学にて原田幸一郎、神尾真由子らに師事している。
◎ヴァイオリン部門 最終結果(同位は演奏順)
第1位 水野琴音
♪チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
第2位 小西真璃花
♪シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
第2位・岩谷賞(聴衆賞) 中嶋美月
♪パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品6
入選 荻原緋奈乃
♪チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
(共演:高関健指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)
最終日の30日に行われた作曲部門では、丹羽菜月と前川泉が第1位を分け合った。丹羽は愛知県立芸術大学、同大学院を卒業後にパリへ留学。現在は愛知県立芸術大学にて非常勤講師を務め、作曲活動だけでなく、日本各地に伝わる木遣りの研究にも取り組む。受賞作である「脱臼的解決法Ⅳ」は、2019年から始めたシリーズの4作目にあたる室内楽作品。
前川は、東京藝術大学大学院修士課程を修了し、現在はケルン音楽舞踊大学修士課程に在籍。受賞作「Of Mice」は、アメリカの作家ジョン・スタインベックの短編小説『ハツカネズミと人間 Of Mice and Men』を下敷きにしたという。
◎作曲部門 最終結果(同位は演奏順)
第1位・岩谷賞(聴衆賞) 丹羽菜月「脱臼的解決法Ⅳ」
第1位 前川泉「Of Mice」
第3位 石川康平「lsq」
(演奏:板倉康明指揮、東京フィルハーモニー交響楽団)
日本音楽コンクール
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