山形交響楽団創立名誉指揮者の村川千秋が90歳の卒寿記念公演に選んだのは、最も愛するシベリウスの第3交響曲。1972年の結成から半世紀を経て、山形の風土とシベリウスの音楽の相性の良さが最高の形で示された。なんと輝かしく豊かなのか。自然体で力みはないのに、すべての音にエネルギーと覇気が満ちる。しかも美感は保たれ、繊細さや滋味、幽玄な情趣も十分で、背景の細かい刻みやトレモロは一瞬も疎かにされない。村川の充実、山響の実力を十全に示すばかりか、本作のファーストチョイスとなり得る畢生の名演。別収録の「カレリア組曲」も同様。村川の卒寿からの新全集を熱望する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年11月号より)
【information】
SACD『シベリウス:交響曲第3番、カレリア組曲、 交響詩「フィンランディア」/村川千秋&山響』
シベリウス:交響曲第3番、カレリア組曲、交響詩「フィンランディア」
村川千秋(指揮)
山形交響楽団
収録:2023年1月、やまぎん県民ホール(ライブ) 他
妙音舎
MYCL-00045 ¥3520(税込)