盤石の布陣でドラマティックに描き出す愛憎劇
東京シティ・フィルが11月の定期演奏会でプッチーニの歌劇《トスカ》を演奏会形式で上演する。これは2020年3月の定期演奏会で行う予定だったがコロナ禍により中止となった企画。今回、常任指揮者・高関健のたっての希望により、当初と同じキャストでの上演が実現する。
タイトルロールに東京二期会の舞台でも同役を演じ高い評価を得ている木下美穂子。トスカの恋人カヴァラドッシには、力強いリリコの歌声が特徴のテノール・小原啓楼。敵役のスカルピアは、今、イタリア・オペラのバリトンでこの人以上の表現者はいないともいえる上江隼人。他に、アンジェロッティ・妻屋秀和、堂守・晴雅彦、シャルローネと看守・大塚博章、スポレッタ・高柳圭といずれも芸達者な歌手を揃えた万全の布陣だ。合唱は、飯守泰次郎が常任指揮者時代に創設した東京シティ・フィル・コーア。そして東京シティ・フィルが本拠地をおく江東区の児童合唱団で同楽団との共演も行っている江東少年少女合唱団が出演する。
プッチーニはオーケストレーションの素晴らしい作曲家なので、舞台上にオーケストラが上がる演奏会形式での上演は、そのシンフォニックなサウンドを存分に堪能できるという利点がある。もちろん「オペラ」である以上、歌による表現とオーケストラ・サウンドとのバランスは大きな課題となるが、高関はそのあたりをうまくコントロールしてくれるにちがいない。流麗で美しいプッチーニならではの音楽の世界に没頭したい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2023年10月号より)
第365回 定期演奏会
2023.11/30(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp