小池優介(バリトン)

5年をともにしてきたデュオが導く、ドイツリートの世界

 バリトン界に若き新星が現れた。昨年の第91回日本音楽コンクールで第2位と岩谷賞(聴衆賞)を受賞した1995年生まれの小池優介。10月、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットの「フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ」に登場。ドイツ歌曲のリサイタルを開く。

 「前半は浜辺や湖、小川といった、ドイツ歌曲の詩によく出てくるテーマごとに、それがピアノや歌の音形としてどのように表現されているか、少しだけ説明を交えながら進めるプログラム。後半はシューベルトを、レクチャーなしでじっくり聴いていただきます。僕が翻訳した日本語訳も投映するので、わかりやすく聴いていただけると思います」

 バッハ・コレギウム・ジャパンに参加するなど(現在の最年少メンバー)、バロックの宗教曲やロマン派歌曲を中心に活動する。今のところオペラを歌うつもりはない。たどってきた道筋とレパートリーがかなり独自で興味深い。

 「藝大の1年生の時にバッハカンタータクラブに入って、これは面白いと思いました。じつはそれまで、バッハに声楽曲があることすら知らなかったのです(笑)。それからは時代をさかのぼって、グレゴリオ聖歌など定量譜が成立する前の古いネウマ譜の中世音楽に傾倒していきました。ドイツ歌曲は、大学院を受験する時に、自分の表現を育てるために良いのではないかと思って勉強し始めたのがきっかけです」

 取り組んでみると、バロックとロマン派の歌曲の、言葉と音楽の結びつき方に共通点を感じた。

 「バロックにおけるレチタール・カンタンドは、言葉をどう表現するか。150年をまたいだドイツ歌曲も、詩をどういうふうに音楽にしていくか。様式や言葉のしゃべり方は違っても、とても似ているところがあると思いました」

 だからこそ、今回も“言葉”にスポットを当てたプログラムなのだろう。ピアノは居福健太郎。

 「チラシ裏に評論家の梅津時比古さんが、『ドイツ歌曲は歌とピアノが主と従ではなく対等』と書いてくださいました。居福さんはまさにそういうピアニスト。日本音コンの時、ある曲で居福さんが、『ごめん。ここは歌をつぶしてしまうかもしれない。でも仕方がないところなのでつぶれてくれ』と(笑)。そんなことを歌い手に言う人、いないですよね。でもバランスよく弾くことだけを考えすぎると、そこで失われてしまうものもあると思う。歌がどう聴こえるかだけではなくて、“ドイツ歌曲”という音楽を二人で作っているリート・デュオです。そこを聴いてください!」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2023年10月号より)

フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ64
小池優介 バリトン・リサイタル
2023.10/7(土)15:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
問:横須賀芸術劇場046-823-9999
https://www.yokosuka-arts.or.jp