前半2曲は“リフキン説”に従った弦と通奏低音のみのオリジナル版。フルート独奏で有名な第2番は、ヴァイオリン独奏となる。浅井咲乃のソロがとてもいい。清潔なイントネーションで透明、実に爽やか。第3番もトランペット、オーボエなし。序曲からとても素晴らしい。特にフーガのスピード感あふれるリズムの切れ味。その後半の高揚にはワクワクさせられる。鳴っていないはずのトランペットが頭の中で響いてくるのも不思議だ。ブーレやジーグでは、旋律とバスの生き生きとした動きの絡みがとても面白い。バッハならではの耳の愉悦。疑作の第5番は珍しく、バッハ以後の新時代の息吹が感じられる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2023年10月号より)
【information】
CD『バッハ 管弦楽組曲集/延原武春&コレギウム・ムジクム・テレマン』
J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番、同第3番/作曲者不詳(伝J.S.バッハ):管弦楽組曲 ト短調
延原武春(指揮)
コレギウム・ムジクム・テレマン
ナミ・レコード
WWCC-7986 ¥2750(税込)