『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2023年10月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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世界の指揮者界では女性の台頭が著しい。1月の公演にも数多くの女性指揮者が登場するが、その中から、特にヨアナ・マルヴィッツ、マリー・ジャコー、ギエドレ・シュレキーテ、オクサーナ・リーニフといったまだまだ若手の旬の女性指揮者陣に注目したい。
まず、ドイツ人のマルヴィッツは、昨年もベルリン、ロンドン、パリなどのメジャー・オペラに登場しているが、2023年からベルリン・コンツェルトハウス管の首席指揮者となってますます注目を浴びている。それに加えて1月には、ザルツブルク・モーツァルト週間で、ついにウィーン・フィルの指揮台にも登壇。この演奏会はピアノ独奏をレヴィットが担当する注目の演奏会でもある。ジャコーはフランス人。現在、デンマーク王立オペラの首席指揮者、ウィーン響の首席客演指揮者として活躍中。1月もウィーン響でユッセン兄弟のピアノ・デュオとの興味深い共演がある。ちなみに彼女は来年3月に来日して読響に客演する。同じく読響にこの9月に客演するのはリトアニア出身のシュレキーテ。一昨年、二期会の「魔笛」で快演を演じ、一躍日本でも注目を浴びた。1月はチューリヒ歌劇場でマスネ「ウェルテル」を振る。ウクライナ人指揮者のリーニフは、バイロイト音楽祭に始めて登場した女性指揮者としてすっかり有名になったが、2022年からボローニャ歌劇場の音楽監督に就任し、この11月には同歌劇場を率いて来日公演も行う(プッチーニ「トスカ」)。これにより、日本でもその名が周知されることは間違いない。ちなみに1月は同歌劇場で同じプッチーニの「マノン・レスコー」を振る。
さて女性指揮者を離れ、2人の老匠指揮者の話題。ズービン・メータはミュンヘン・フィル、ヘルベルト・ブロムシュテットはバイエルン放送響で共にブラームス交響曲4曲ツィクルスを敢行。同じミュンヘンでまあ贅沢なことだ。バイエルン放送響といえば、今シーズンから首席指揮者となったサイモン・ラトルは、同オケでエルガー「エニグマ変奏曲」やマーラー「巨人」なども振るが、1月に限っては前手兵オケであるロンドン響でグリゴリアンを主役に演奏するヤナーチェク「イェヌーファ」の演奏会形式上演に、より惹かれるものがある。
ところでベルリン・フィルでは、ペトレンコがバルトーク「かかし王子」、シェーンベルク「ヤコブの梯子」といった玄人好みの難曲に挑む。ベルリンでは、ちょうど1月には現代音楽祭「ウルトラシャル」が開催され、ベルリン・ドイツ響やベルリン放送響が参加するので、1月のベルリンの気分はまさに「ノイエ・ムジーク(現代音楽)」。ベルリン・ドイツ・オペラでプレミエとなるジョージ・ベンジャミンの「リトゥン・オン・スキン」やベルリン州立歌劇場でのドビュッシーとミュライユのリンケージ作品などももこの流れの一環か…。
1月の恒例音楽祭「ザルツブルク・モーツァルト週間」。今回は、サヴァール指揮のモーツァルト「皇帝ティートの慈悲」(セミ・ステージ形式)を最大の目玉として、他にもファウストのヴァイオリンやタメスティのヴィオラらによる室内楽、ホルンのバボラーク・アンサンブル、ルルーのオーボエとパユのフルートによるサリエリの二重協奏曲、そしてマルヴィッツやシャニの振るウィーン・フィルなど、なかなか賑やかな顔ぶれだ。ニューイヤー・コンサート系では、ティーレマン指揮のウィーン・フィルはもちろんのこと、ミンコフスキ指揮のNDRエルプフィル、マルヴィッツ指揮のベルリン・コンツェルトハウス管、フルシャ指揮のチェコ・フィル、大野和士指揮のブリュッセル・フィルなどいかにも楽しそう。ワーグナー系として見落とせないのは、ドレスデンの「トリスタン」(ティーレマン指揮)やモネ劇場の「ワルキューレ」(カステルッチ演出)。他には、英国ロイヤル・オペラのR.シュトラウス「エレクトラ」、オランダ国立オペラのヘンデル「アグリッピーナ」なども要注目。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)