大舞台に羽ばたいていく新星たちの今を聴く
Hakuju Hall主催の「二期会 ディーヴァ, ディーヴォ」は、日本最大のオペラ団体・二期会のオペラ研修所を優秀な成績で修了した歌手たちによるデビュー・コンサートとして、2013年に第1回が開催された。以来10年、ここからスタートした歌手たちの多くが、現在、オペラの舞台で華々しい活躍を繰り広げている。第27回を迎える今回は、ソプラノの舘野真由花と田中沙友里、バリトンの室岡大輝がそのデビューを飾る。
舘野は修了公演でヴェルディ《群盗》第3幕のアマーリアとカルロの二重唱を歌った。幅のあるドラマティックな歌声が印象的だったが、すでにいくつかのオペラ公演にも出演している。今回は《ランメルモールのルチア》と《マノン》のアリアという細やかな歌唱技術の必要な2曲を歌う。
田中と室岡が修了公演で歌ったのは《シモン・ボッカネグラ》第1幕のアメーリアとシモンの二重唱。生き別れになった父娘が再会する感動的なシーンで複雑な心の動きが要求されるが、ふたりとも新人らしからぬ安定した歌唱を披露した。今回、田中が歌うのは《ラ・ボエーム》のミミのアリアと《道化師》のネッダの〈鳥の歌〉というリリコの王道の2曲。室岡は《ドン・カルロ》からロドリーゴの死の場面というバリトン屈指のレパートリーに挑戦する。
この「二期会 ディーヴァ, ディーヴォ」に出演した数多の先輩たちのように、この3人も数年のうちに東京二期会オペラの舞台に登場するのではないだろうか。まさに「新星」誕生の瞬間をぜひ目撃してほしい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2023年9月号より)
2023.11/2(木)14:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp