独創的な解釈から生まれる唯一無二の世界
スタイリッシュな印象と深く哲学的なムードを併せ持つ、アレクサンドル・タロー。1968年、バリトン歌手の父とパリ・オペラ座ダンサーの母のもとパリに生まれ、豊かな感性で、正統派でありながら枠にとらわれない音楽表現を続けてきた。
そんなフランスの名ピアニストが、地域の人々に本物の音楽を届けることをコンセプトとする、大阪、箕面市立メイプルホールの「身近なホールのクラシック」に登場。フランスものとグリーグの「抒情小品集」からの抜粋を組み合わせた、鮮やかなプログラムを披露する。
フレンチ・バロックで幕を開け、近代フランス音楽へとつながってゆく楽曲の数々は、いずれもタローの洗練されたセンスでどう響くのか、期待が高まるものばかり。とくに楽しみなのが、彼自身のピアノ編曲版によるドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」。既存のものではなく、タロー自らの感性とこだわりが反映された編曲は、オーケストラ曲を一体どんな形で再現、もしくは変貌させるのだろうか。
公演と連動する講座企画もあり、コンサート当日に向けて、演奏家やプログラムへの理解度と好奇心を深めていける仕組みも用意されている。一般2800円、大学生以下は1000円という手頃なチケット料金もうれしい。
世界の舞台で新しい試みを続けるアーティストの、独特の色彩感覚、響きへの強いこだわりを、地域のホールで身近に体感できる、貴重な機会だ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年9月号より)
2023.10/19(木)19:00 箕面市立メイプルホール
問:箕面市メイプル文化財団072-721-2123
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