ピティナ・ピアノコンペティション特級で鈴木愛美がグランプリ

 47回目を迎えたピティナ・ピアノコンペティション(主催:全日本ピアノ指導者協会)は、最上級にあたる特級ファイナルの審査が、サントリーホール大ホールで行われ、4名のコンテスタントが梅田俊明指揮の日本フィルと協奏曲の課題で共演。東京音楽大学4年に在学中の鈴木愛美(まなみ)が、グランプリ(賞金140万円)に選ばれた。

鈴木愛美 ©I.Sugimura/Bravo

 審査員は、若林顕、関本昌平、外山啓介ら国内勢のほか、ローナン・オホラ(イギリス)、ヴォイチェフ・シヴィタワ(ポーランド)ら海外の著名な指導者を含む計11名が務めた。

 鈴木は、ファイナル来場者の投票による聴衆賞でも第1位に輝いた。一方、オンライン視聴者も、二次予選〜ファイナルを通じて、26名の出場者の中から応援したいピアニストに投票できるサポーター賞は、塩﨑基央が第1位となった。

特級最終結果
グランプリ 鈴木愛美(東京音楽大学4年)
銀賞 三井柚乃(昭和音楽大学4年)
銅賞 神原雅治(名古屋音楽大学3年)
入賞 嘉屋翔太(東京音楽大学大学院1年)

聴衆賞
第1位 鈴木愛美
第2位 三井柚乃
第3位 嘉屋翔太
第4位 神原雅治

サポーター賞
塩﨑基央(東京音楽大学3年)

鈴木愛美
三井柚乃
神原雅治
嘉屋翔太

写真提供:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会

 鈴木愛美は、2002年大阪府生まれ。大阪府立夕陽丘高等学校音楽科を経て、東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)に給費奨学生として入学。現在4年在学中。フッペル鳥栖ピアノコンクールフッペル部門第1位、宝塚ベガ音楽コンクール・ピアノ部門第4位などの入賞歴がある。浜松国際ピアノアカデミー2023に参加。現在、東京音楽大学では石井克典に師事している。

 表彰式終了後に行われた記者懇談会では、「グランプリを獲れるとは思っていなかった」とやや緊張の面持ちで喜びを語った鈴木。ファイナルではベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を弾き、第1楽章冒頭のソロ部分から、ひときわ抒情性にあふれた作品を瑞々しいタッチで熱演。選曲の理由を尋ねられると、セミファイナルで演奏した(同じト長調の)シューベルト「幻想」ソナタと世界観が共通しているように感じており、一緒に演奏したかったとのこと。「今日、第2楽章から3楽章に移るときにも感じたのですが、生きる喜びに溢れていて、人間として大切なものが感じられる」と、作品へのイメージを語った。

©I.Sugimura/Bravo

 日頃、「音を出さずに楽譜をよく読んで、楽譜を手がかりに何を伝えるのか自分で考え、それを音に出す」ように心がけているという。好きなピアニストとしては、ラドゥ・ルプーの名を挙げた。特にシューベルトがお気に入りだそうで、「(彼の演奏を)聴くと、味わったことのない感覚になる。奇跡かなと思うくらい美しい」と表現。目指す演奏家像を問われると、そちらも「ラドゥ・ルプー」と回答。自身も、憧れの存在と同様、音楽に対して深く思索するピアニストであることが、ことばの端々からも感じられた。今後は海外のコンクールにも挑戦してみたいとのことで、今回のグランプリ受賞を契機に、ますますの活躍が期待される。

ピティナ・ピアノコンペティション特級
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