佐藤正浩(指揮/神戸市混声合唱団音楽監督)

日本有数のプロ合唱団の響きから感じる日仏の共鳴

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 1989年設立のプロ合唱団・神戸市混声合唱団。2021年からその音楽監督を務める。

 「合唱メンバーは36人(S11 A8 T8 B9)。定期的に資格審査を行い、高いクオリティが保たれています。オペラに出演して主役を張るメンバーが何人も。その持ち声を生かして、ダイナミックな音楽が作れるのは魅力です。私が目指しているのは、それを保ちつつ、耳を使った純正な響き。繊細なアンサンブルが自然にできる合唱団だと思いますし、そこをもっと高めていきたいと思っています」

 自治体(神戸市民文化振興財団)が運営するプロ合唱団は数少ないし、ホール(神戸文化ホール)、オーケストラ(神戸市室内管弦楽団)とともに合唱団も運営しているのは日本で神戸だけだ。

 「国際的に認知されている神戸国際フルートコンクールもあるでしょう? 自治体が芸術文化に理解を示してきた。ただ、財政面で市に全面的に頼ってやっていける時代ではないと思うので、頑張って盛り上げていきたい。今後どう広げていったらいいか、今はその岐路だと思います」

 9月定期「仏蘭西からの贈り物」は、フォーレ、ドビュッシー、デュリュフレ、メシアンと、萩原英彦、三善晃、武満徹との対照。

 「フランス音楽と、そこに惹かれた日本人作曲家をオーバーラップしたプログラム。それぞれが呼応し合い、響きとして共鳴するという感触を得ています」

 リヨン歌劇場やシャトレ座で豊富な経験を持つ。フランス語を歌にする時に難しいのは、“韻律”を理解することだという。

 「拍節どおり、強拍にアクセントを置くとフランスの音楽を表現できない場面がけっこうあって、それを少しずらしてやることで味わいが出る。そういうことも試してみたいですね」

 新国立劇場オペラ研修所長の重責を担うなどオペラ指揮者としての活躍の一方で、合唱には高校時代から密に関わってきた。その意味では“合唱畑”の人だ(福島県立会津高校2年生の彼がピアノを弾いた湯山昭〈ゆうやけの歌〉は合唱界では伝説)。しかし合唱ファンだけでなく、音楽ファンに広く聴いてほしいと話す。

 「ふだんオーケストラや他のジャンルのコンサートを聴きに行く音楽愛好家の人たちにも来てほしいですね。そのためにも、日本の合唱曲だけを並べるのではなく、毎回バラエティに富んだプログラムを作っているところです」

 高水準のプロ合唱を、合唱マニアの占有にしておいてはもったいない!
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2023年9月号より)

神戸市混声合唱団 秋の定期演奏会「仏蘭西からの贈り物」
2023.9/16(土)14:00 神戸文化ホール
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349
https://www.kobe-bunka.jp/hall/