田代慎之介 ピアノリサイタル 2023

ハンガリー仕込みの熟練したピアニズムを堪能する

(c)三好英輔

 ハンガリー音楽のスペシャリストとしてリストやバルトークをライフワークとするピアニストの田代慎之介は、リスト音楽院に留学し、作曲家ゆかりの地でその空気に触れ、音楽性と表現力を高めた。現在は武蔵野音楽大学で後進の指導も行い、自身の培ってきたものを次世代へと伝えている。

 今回リサイタルに選んだのは、モーツァルトとバルトークとラフマニノフ。モーツァルトのソナタ第3番はハイドンの影響が見られるものの、モーツァルトの独自性が色鮮やかに映し出される作品。バルトークの「ミクロコスモス」より〈ブルガリアのリズムによる6つの舞曲〉は半音階や不協和音、分散和音、同音連打、ジャズのリズムなどバルトークの音楽語法が満載。田代の自家薬籠中の作品である。ラフマニノフでは楽器を豊かに鳴らし、作曲家の生きた時代を彷彿とさせる演奏が期待できそう。ソナタ第2番(1931年版)は大変な難曲だが、荘厳さと劇的な展開が聴きどころ。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年8月号より)

2023.9/5(火)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
https://www.proarte.jp

他公演
2023.8/25(金) 札幌コンサートホール Kitara(小)(平和ステージ・オフィス011-665-0675)