マリオ・ヴェンツァーゴ(指揮) 読売日本交響楽団

名匠による清新なブルックナー体験、再び!

マリオ・ヴェンツァーゴ (c)読響

 2021年11月、ヴェンツァーゴは読売日本交響楽団と初共演し、ブルックナーの交響曲第3番を演奏した。細やかなオペレーションによって飄々と、そして広がりをもって組み立てられるフレッシュな演奏に、目を開かれる思いがした。33年ぶりに来日した名匠が、まだ誰も聴いたことのない新鮮なブルックナー像を打ち立てたのだ。当日の客席の熱狂ぶりも忘れられない。

 心待ちにしていた読響との再共演が叶った。今回は、ブルックナーの交響曲第4番がメインの演奏会となる。この作曲家のもっともメジャーな作品で、手の込んだフレージングを駆使し、明快で輝かしい演奏を聴かせてくれるはずだ。

 読響によるブルックナーといえば、常任指揮者を務めたスクロヴァチェフスキとの演奏が懐かしく思い出されよう。即興的な表現も伴うヴェンツァーゴが草書体の演奏なら、スクロヴァチェフスキは楷書体。作品のエッセンスを厳然と、同時に爽やかに示してくれたブルックナーだった。今年は、その彼の生誕100年にあたる。

 プログラム前半は、作曲家としても活躍したスクロヴァチェフスキの交響曲が日本初演される。芸術への慈善活動で知られたミネアポリスの実業家の思い出のために2003年に書かれた交響曲だ。彼らしい厳しく研ぎ澄まされた作風が、亡き巨匠との思い出までも蘇らせてくれるに違いない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年8月号より)

第631回 定期演奏会
2023.9/12(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp