第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者のトマシュ・リッテル。コンクールライブ盤に続く本アルバムでは1819年製グラーフのレプリカを使用し、そのウィーン的サウンドが生かされるプログラムを組んだ。ショパンの前の世代のポーランド人作曲家・レッセルの「幻想曲」やベートーヴェンの変奏曲では、重みのある多彩な音がオルガンやオーケストラを思わせる。ショパンからは、ウィーンの楽器で作曲されていたと言われる初期作品のノクターンやスケルツォ第1番を選び、感情や情景の幻想的な移ろいを丸みのある音で巧みに描く。ピリオド楽器のパワー、表現の広さを存分に伝える。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年8月号より)
【information】
CD『幻想曲集〜レッセル、ハイドン、ヴォジーシェク/トマシュ・リッテル』
レッセル:幻想曲 ハ長調/ハイドン:幻想曲(カプリッチョ) ハ長調/ヴォジーシェク:幻想曲風ソナタ 変ロ短調/ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調/ショパン:夜想曲 嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」、スケルツォ第1番 ロ短調 他
トマシュ・リッテル(ピリオド・ピアノ)
NIFC/東京エムプラス
PNIFCCD 146 ¥3143(税込)