日越外交関係樹立50周年記念 新作オペラ《アニオー姫》記者発表会

400年前に実在したベトナムの王女と長崎の商人の愛の物語、日本初演が決定!

 今年、外交関係樹立50周年を迎える日本とベトナム。その記念として、17世紀初期に実在したベトナムの王女・アニオー姫と、長崎の貿易商・荒木宗太郎との運命に翻弄される愛の物語を描いたオペラ《アニオー姫》が制作されている。すでに、ハノイでの世界初演(9月22日、23日、24日)は発表されていたが、11月4日に昭和女子大学・人見記念講堂で日本初演されることが決まった。7月11日、都内で記者発表会が行われ、プロジェクト代表および総監督の本名徹次、アニオー姫役のダオ・トー・ロアンとブイ・ティ・チャン、荒木宗太郎役の小堀優介、駐日ベトナム大使ファム・クアン・ヒエウらが登壇した。

 会見の冒頭、駐日ベトナム大使のファム・クアン・ヒエウが挨拶に立った。
 「《アニオー姫》は、17世紀に実在した心温まる恋の物語を再現したオペラです。日本とベトナムでの物語を題材としたこのオペラが、両国の音楽文化向上の相乗効果となることを、そして今後の日越のパートナーシップの強固な基盤となることを期待しています」

駐日ベトナム大使:ファム・クアン・ヒエウ

 続いて、総監督・指揮者を務める本名徹次より、新作オペラ上演への想いが語られた。本名は、2005年からベトナムを拠点に活動し、ベトナム国立交響楽団の音楽監督兼首席指揮者を務めるなど、まさに日越の架け橋となる存在だ。
 「新しくオペラを作ることは簡単ではないですが、多くの方のご協力のもと、現在も制作を進めています。作曲はベトナムを代表する素晴らしい作曲家、チャン・マィン・フンさん、演出は日本を代表する歌手でもある大山大輔さん、そして各国を代表するソリスト陣、ベトナム交響楽団や舞台技術スタッフなど、たくさんのスペシャリストが集まった最高のチームでの上演です。日本公演を通じて、ベトナムの才能溢れるオペラ歌手やプロジェクトを支えるスタッフ、音楽家の存在を知ってもらいたい。加えて、日本で頑張っているベトナムの方にエールを送れるような公演になればと思います」

総監督・指揮者:本名徹次

 この作品は、日本語とベトナム語の両方が用いられるという。この点について、演出と日本語の作詞を務める大山より説明があった。
 「第1幕は日本からベトナムに向かう船上を描く場面のため日本語、第2幕はベトナムに着いてから江南の街の場面になるのでベトナム語での上演になります。第3幕、第4幕の場面は長崎で、基本的には日本語ですが、両国の言語がなるべく均等になるように調整しています。また、字幕は各国とも日本語とベトナム語の両方を表示する予定です。二種の言語が同程度に登場する世界でも珍しいオペラになると思います」

演出・戯曲作詞(日本語):大山大輔

 荒木宗太郎役の小堀によると、各国の言語での上演ということで、発音、発声に苦労もあるという。特にベトナム語は、アルファベット表記ではない言語で、イタリア語やドイツ語での歌唱以上に勉強が必要だったそうだ。
 「ベトナム語での歌唱というのは、ローマ字で発音を表せるような言語とは一線を画すものがあります。歌い回しというのでしょうか、演歌でいう『こぶし』のような歌い分けが存在し、母音も日本語よりもはるかに多いため、ハノイ出身で日本在住の方のレッスンを受けてから稽古に臨みました。ベトナムで行われた稽古では、アニオー姫役のお二人から指導を受けています。まだ読まなければならない楽譜がたくさんあるので、引き続き頑張ります」

荒木宗太郎役:小堀勇介

 アニオー姫役の二人は今回が初来日で、数日前にはアニオー姫と荒木宗太郎が生涯を終えた長崎を訪ね、墓地へも足を運んだという。
 「《アニオー姫》は、今まで出演してきたオペラの中でもっとも特別と言える作品です。二人の墓地を訪ねたときに、私たちは二人とも目頭が熱くなりました。なぜ泣いたのかをうまく説明することはできませんが、二人の愛の物語を想像して泣いたのかもしれません。当初よりハノイ公演のみというのはもったいないと思っていたので、今回日本での公演が決まったことがとても嬉しいです。両国の関係の発展に貢献できたらと思います」(ダオ・トー・ロアン)

ベトナム・日本公演アニオー姫役:ダオ・トー・ロアン

 「日本に来てからまだ数日しか経っていませんが、日本文化や日本人の心遣いに感動しました。かつてのアニオー姫が荒木とともに日本に渡ってきた理由がわかるような気がします。今回の日本訪問は間違いなく、公演に向けた役づくりの糧になっています」(ブイ・ティ・チャン)

ベトナム公演アニオー姫役:ブイ・ティ・チャン

 最後には、日本公演でアニオー姫を演じるダオ・トー・ロアンと、荒木宗太郎を演じる小堀勇介による第2幕デュエット〈星影の舟〉、ベトナム公演でアニオー姫を演じるブイ・ティ・チャンによる第3幕ソロ曲〈一弦琴のアリア〉が披露された。アニオー姫を演じる二人はベトナムの民族衣装アオザイで、小堀は羽織袴姿で登場し、会見を華やかに締めくくられた。
 400年前に日本とベトナムの架け橋となった二人の物語が、オペラという芸術に姿を変え、再び両国の関係を深めてくれそうだ。

日本公演でアニオー姫を演じるダオ・トー・ロアンと、
荒木宗太郎を演じる小堀勇介による第2幕デュエット〈星影の舟〉
ベトナム公演でアニオー姫を演じるブイ・ティ・チャンによる第3幕ソロ曲〈一弦琴のアリア〉
両国の伝統衣装をまとう4人(一番左は司会を務めたフォンチー)

写真・文:編集部

【Information】
日越外交関係樹立50周年記念 新作オペラ《アニオー姫》

朱印船が結んだ玉華姫と荒木宗太郎の恋

〈ベトナム公演〉
2023.9/22(金)、9/23(土)、9/24(日) ハノイオペラハウス

〈日本プレミア公演〉
11/4(土)14:00 昭和女子大学 人見記念講堂
問:新作オペラ「アニオー姫」プロジェクト事務局
https://anio-opera.jp