故郷への思いを音楽にのせて
ピアニストの佐野優子は東京藝術大学附属音楽高等学校を経て同大学を卒業後、ロンドンの英国王立音楽院修士課程に進み、首席で修了。現在はロンドンに拠点を置き、ヨーロッパだけでなく日本、アメリカ、中南米、アジア諸国でも演奏活動を展開している。リサイタルはもちろんのこと、多くの公演で協奏曲のソリストも務めているが、それと並行して取り組むのが、高校生の頃から情熱を注いでいるというアウトリーチ活動だ。中学校などでのトーク・コンサートをはじめ、科学や美術、環境問題と音楽をコラボレーションさせるなど、独自の視点とアイディアを活かした活動は国際的にも注目を集めている。今回のリサイタルも、そんな彼女だからこそ実現した企画だ。
開催地は佐野の出身地である東京都板橋区で、青少年が積極的に来場できるように特別なチケット料金を設定。クラシック音楽を愛する人はもちろん、まだなじみのない方も安心して楽しめる。プログラムは非常に多彩で、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》序曲(佐野編・世界初演)のようなどこかで耳にしたことのあるメロディから、リストの「ラ・カンパネラ」やショパンの「葬送」ソナタなどの重厚な作品まで並び、多くの人を引き込む選曲となっている。卓越した技巧と豊かな音楽性、幅広いアイディアを兼ね備えた佐野のピアニズムを存分に味わえるコンサートだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年7月号より)
2023.8/3(木)19:00 板橋区立文化会館
問:板橋区文化・国際交流財団03-3579-3130
https://www.itabashi-ci.org