作曲家の作品集に留まらず、様々な切り口で日本歌曲アルバムをリリースしてきたアルトの小川明子による10タイトル目のCD。明治のお雇い外国人が手掛けたオルガン・ピアノ譜など、オリジナル伴奏によって歌われる唱歌たちは、単なるノスタルジーの対象や子ども向けといった感傷を超えた芸術的センスに溢れている。幼い頃より意味もわからず口ずさんできた歌詞に、漢字で改めて向きあうという意味でブックレットの意義も大きい。ライナーノーツに記載された、讃美歌〈いつくしみふかき〉に大桑いよ子による歌詞がつけられた〈梅〉にまつわるエピソードも興味深い。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
CD『ふるさと 唱歌・童謡名曲選 /小川明子&山田啓明』
作曲者不詳:あふげば尊し、ふじの山、我は海の子、茶摘、鯉のぼり、海、冬景色/Ch.コンバース:梅/岡野貞一:紅葉、春の小川、朧月夜、故郷/本居長世:十五夜お月さん、赤い靴 他
小川明子(アルト)
山田啓明(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7983 ¥3300(税込)