今川映美子(ピアノ) シューベルティアーデ Vol.12

ツィクルスの総決算は“最後のソナタ”で

©武藤 章
©武藤 章

 2006年にスタートした『今川映美子シューベルティアーデ』が最終回を迎える。シューベルトのピアノ・ソナタ全曲演奏を主眼とした今川の取り組みは8年間に及んだ。孤独や愛情、優雅さや哀しみといった人の心の機微を映し出すシューベルトのピアノ曲を、今川は過去11回のコンサートを通じて大切に奏でてきた。ウィーン国立音大での研鑽、数々のコンクール入賞記録やステージ経験を彼女に与えたヨーロッパでの体験すべてが、今川の深みある呼吸感や音色、安定感のある構成力となって彼女のシューベルトの世界を築いている。最終回に演奏されるのは、憂いある表情を見せるソナタ第12番へ短調D625、非常に華やかな曲想を持ち4楽章構成のソナタとも受け取れる「さすらい人幻想曲」、そしてシューベルトが生涯に残したピアノ・ソナタで最後の番号を持つ、長大にして抒情的なソナタ第21番変ロ長調D960だ。ツィクルスの完結に相応しい魅力あるプログラムをたっぷりと味わいたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

11/14(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問 :プロアルテムジケ03-3943-6677 
http://www.proarte.co.jp