ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 マーラー撰集Ⅴ 夜の歌

作品本来の姿を伝える若きマエストロの魅力

 ピエタリ・インキネンと日本フィルのコンビが好調だ。11月には『マーラー撰集』のシリーズ第5弾として、マーラーの交響曲第7番「夜の歌」とシベリウスの交響詩「大洋の女神」を披露する。
 日本フィル首席客演指揮者を務めるインキネンはフィンランドの出身。母国の作曲家であるシベリウスはもちろんのこと、マーラーやワーグナーにも積極的に取り組んでいる。2008年にニュージーランド交響楽団の音楽監督に就任。同楽団とは多くのレコーディングで好評を博している。また、昨年はパレルモでワーグナーの《ラインの黄金》《ワルキューレ》を指揮するなど、コンサートとオペラの両面にわたって、国際舞台での活躍を広げている。日本フィルとはこれまでにたびたび好演を聴かせてくれているが、表層的なスペクタクルを追求するのではなく、整然とした響きのなかから作品本来の姿を伝えてくれるのが彼の魅力といえるだろうか。マーラーのような大規模作品でも、緻密で集中度の高い演奏を期待できそうだ。
 今回、特に興味深いのは、マーラーのなかでもとりわけ謎めいた作品である交響曲第7番「夜の歌」に、インキネンがどうアプローチするか。一つの作品に様々な感情表現が込められると同時に、時代の一歩先を行くようなパロディ性が込められており、作品には様々な解釈の余地がある。発見の多いインキネン流「夜の歌」を聴けるのではないだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

ピエタリ・インキネン ©浦野俊之
ピエタリ・インキネン ©浦野俊之


第665回 東京定期演奏会
11/14(金)19:00、11/15(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
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