東京での初リサイタルで魅せる「若き巨匠」のピアニズム
1990年タシケント生まれ。ウズベキスタンの「若き巨匠」がトッパンホールに初登場する。2009年のロンドン国際ピアノコンクールで優勝したベフゾド・アブドゥライモフは、上から下までがっつり鳴らしきる、強靱なテクニックをもつピアニストとして大いに注目を集めた。12年にウルバンスキ指揮東響との共演でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾いたのが、初めての来日公演。以来、たびたび来日、勇猛果敢にしてダイナミックな演奏を聴かせた。
そのウズベキスタンの神童も30半ば。2020年録音のドビュッシー、ショパン、ムソルグスキー作品を集めたアルバムを聴くと、音楽の構成や全体のバランスへの配慮が増したように思える。その華麗なテクニックに、アダルトな味わいも加わった。
今回、トッパンホールは、そんな彼の成熟をじっくりと聴かせるプログラムを用意した。フランク(バウアー編)の「前奏曲、フーガと変奏曲」は、和音を丹念に響かせる彼の持ち味が生かされよう。教会の雰囲気を湛えたこの曲に続くのは、同郷の作曲家サイダミノヴァによる「古代ブハラの壁」だ。一気にイスラムのサウンドへと切り替わったかと思えば、プロコフィエフやドビュッシーを彷彿とさせる音楽も交じり合う。ラヴェルの「夜のガスパール」では、その練られた音色表現が楽しみだ。後半は、得意のラフマニノフの前奏曲を2曲披露。プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」からの10の小品では、持ち前のキレキレのピアニズムを発揮してくれるに違いない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年6月号より)
2023.6/13(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com