【CD】バッハ × ピアソラ/平野智美

 「2人の間に根源的な共通点があるように感じた」。大バッハとピアソラの2人について、東京藝大・同大学院を経てイギリスに学んだチェンバリスト、平野智美は語る。自分の楽器を「時代や様式の枠に収めたくない」という彼女が、しなやかな姿勢で臨んだ、両者の佳品の録音。ある時は端正に、ある時は大胆に。最大で五重奏となる弦楽器との共演を交えて、平野は主役と脇役の間を変幻自在に渡り歩く。それは、チェンバロという楽器を通じて名演技を披露する、卓越した女優であるかのよう。デモーニッシュさと天使性を併せ持つ2人の巨匠の作品は、時空を超えて共鳴し合う。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2023年6月号より)

【information】
CD『バッハ × ピアソラ/平野智美』

J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第1番、平均律クラヴィーア曲集第2巻 第15番・第18番、同第1巻 第1番/ピアソラ(日下部進治編):アヴェ・マリア、オブリヴィオン、リベルタンゴ、アディオス・ノニーノ

平野智美(チェンバロ)
長岡聡季 大光嘉理人(以上ヴァイオリン) 吉田篤(ヴィオラ) 懸田貴嗣(チェロ) 西澤誠治(コントラバス)

コジマ録音
ALCD-9243 ¥3300(税込)