2002年生まれの若さでドイツ・グラモフォンと契約したスペインのヴァイオリニスト、マリア・ドゥエニャス。デビュー盤がウィーンでのベートーヴェンとは凄い。その期待通り、考え抜かれた美音とフレージングで、楽曲の清新な姿を掬い上げつつ、独特の豊かな歌心もしっかり伝えて魅力的。カデンツァは自作のもので見事な出来栄えだが、22年には名作曲家5人による同曲カデンツァも録音しており、その学究的取り組みは有意義だし、彼女の名奏でそれらを系統立てて聴けるのは嬉しい。さらにその5人の小品まで併録するこだわりぶり。世界的俊才の誕生を確信できるアルバム。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年6月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 他 /マリア・ドゥエニャス』
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調、同 第1楽章のためのカデンツァ集/シュポーア:「ヴァイオリンとハープのためのコンチェルタンテ第1番」より〈第2楽章 アダージョ〉/イザイ:子守歌/サン=サーンス:ハバネラ/ヴィエニャフスキ:レゲンデ/クライスラー:愛の悲しみ
マリア・ドゥエニャス(ヴァイオリン)
マンフレート・ホーネック(指揮)
ウィーン交響楽団 他
収録:2023年1月、ウィーン(ライブ) 他
ユニバーサル ミュージック
UCCG-45071/2(2枚組) ¥3500(税込)