サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2023
エリアス弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル Ⅰ~Ⅵ

結成25年の実力派クァルテットが待望の初来日

(c)Kaupo Kikkas

 室内楽における最高峰、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。第16番までを数えるその全曲を、毎年一つの団体が集中的に弾き切るのが、6月の「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」の「ベートーヴェン・サイクル」である。演奏解釈や各公演のプログラミングに各団体の個性が強く表れるのが面白く、室内楽ファン注目の名物シリーズとなっている。

 今年の同サイクルを担当するのはイギリスの「エリアス弦楽四重奏団」。1998年マンチェスターの王立ノーザン音楽大学在学中に結成され、英国を拠点に活動を展開。ベートーヴェンには5年がかりのプロジェクトで取り組み、最後に室内楽の殿堂ウィグモアホールでサイクル公演と全曲録音を行った。丁寧なソノリティ、深い歌心に現代的な攻めの姿勢も兼ね備え、優れた力量と実績をもつ団体だが、来日は今回が初となり、いよいよその実力を体験できる。

 本公演の最大の特徴は、第13番を2種類の終楽章で2回演奏すること。当初の終楽章である「大フーガ」と、そのあまりの難解さに代わりの曲を求められたことで作られた「アレグロ」である。近年は元案通り「大フーガ」で締める機会が多いが、「アレグロ」も晩年の作曲者の緻密な技法と軽妙なユーモアあふれる一篇。それぞれ単独演奏ではなく、至高の「カヴァティーナ」(第5楽章)に続く第6楽章として、各々の効果を実演で確かめられる稀有な好機となる。ここに象徴される誠実な姿勢で、結成25年の名四重奏団が、練られたプログラムと演奏で聴かせる“全17曲”。その魅力を味わい尽くす。
文:林 昌英

Ⅰ.2023.6/3(土) Ⅱ.6/5(月) Ⅲ.6/7(水) Ⅳ.6/10(土) Ⅴ.6/12(月) Ⅵ.6/14(水)
各日19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:サントリーホールチケットセンター0570-55-0017
suntoryhall.pia.jp
※プログラムの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。