絶好調の名手が注目の新コンビと最高の名曲を奏でる
ベルリン・フィルの第1コンサートマスターを務めながら、ソリストとしても活躍を続ける世界的ヴァイオリニスト・樫本大進。今年1〜2月にフランスのピアニスト、エリック・ル・サージュと「シューマン&ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス vol.1」を行い、濃密かつ味わい深い演奏で魅了した彼が、今度はこの6〜7月、山田和樹指揮/バーミンガム市交響楽団の日本ツアーにソリストとして参加し、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を披露する。
山田和樹&バーミンガム市響とは、2022年5月の現地での定期(ブルッフの協奏曲第1番)以来、今回が2度目の共演となる。ただし山田との関係は長く深い。
「山田和樹さんとは10年来の付き合い。同じベルリンに住んでいて家も遠くないので、食事を共にするなどプライベートな交流もあります。またコンサートでも、ベートーヴェン、サン=サーンスの協奏曲など、これまでに4〜5回共演しています。彼の指揮は本当に素晴らしい。音楽がとても自然で、ヨーロッパの演奏家を一瞬で自分の方に引き寄せる、アジア人には稀な才能を持った方だと思います。しかも協奏曲が大好きで合わせも得意なので、共演していて気持ちがいい。話し合いなどしなくても自然に合うケースが多々あります」
山田和樹が今年4月から首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーに就任したバーミンガム市響にも好印象を抱いている。
「こちらもやはり素晴らしいオーケストラです。ラトルやネルソンスなど歴代の名シェフに鍛えられていて、エネルギーがあります。山田さんと新しい時代に入ろうとしている今は、特にワクワクさせられますね。それにブリリアントで機能的なロンドンのオーケストラとは持ち味が全く違っていて、唸るような奥深い音を目指しているようにも感じます」
ブラームスの協奏曲は、「山田さんと話し合い、互いに様々な曲を出し合った結果」決まったという。
「昔から何度も弾いている曲ですが、山田さんの指揮では初めてで、日本での演奏も久しぶりです。この曲はベートーヴェンの作品と並ぶヴァイオリン協奏曲の王様のような存在。ヨーロッパではこれら2曲が一番多く弾かれています。曲自体はこの上なくいい音楽。すべてが求められ、すべてに魅せるものがありますし、自分の中にあるすべての可能性を出し尽くさないと、納得できる演奏にならない曲でもあります」
ベルリン・フィルのコンサートマスターが、別の欧州名門楽団で協奏曲のソリストを務める点も興味をそそる。
「私は、ベルリン・フィル入団前に様々なオーケストラと協奏曲を沢山演奏していたので、この方が慣れていますし、共演に臨む姿勢を特に変えることもありません。先のバーミンガム市響との共演も凄く楽しかったですよ」
また今回は、山田和樹がバーミンガム市響のシェフに就任後、初の日本ツアーとなる。そこで樫本は、プログラム後半の2曲─エルガーの交響曲第1番とラフマニノフの交響曲第2番。なお他にチョ・ソンジンがソロを弾くショパンのピアノ協奏曲第2番もある─にも言及する。
「山田さんがイギリスのオーケストラのシェフに就任後すぐにエルガーの交響曲に挑戦するのは偉いと思います。ラフマニノフの交響曲第2番は、22年のBBCプロムスで演奏して絶賛された、彼らの中では出来上がった作品。きっと凄い演奏になるでしょう」
樫本のソロともども、本ツアーへの期待は大きい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年5月号より)
山田和樹指揮 バーミンガム市交響楽団
2023.6/25(日) 14:00 横浜みなとみらいホール ★
6/29(木) 19:00 サントリーホール ◎
6/30(金) 19:00 サントリーホール ★
問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。
他公演
2023.6/23(金) 熊本県立劇場 コンサートホール ★
6/24(土) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール ★
6/27(火) 石川県立音楽堂 コンサートホール ★
6/28(水) 文京シビックホール ◎
7/1(土) 愛知県芸術劇場 コンサートホール ◎
★=樫本大進 ◎=チョ・ソンジン