私はN響のスピリットが大好きなのです
この7月、フランス国立リヨン管とともに日本を訪れたレナード・スラットキンに、公演の合間を縫って、11月のNHK交響楽団との公演について話を聞いた。
スラットキンとN響の初共演は1984年だった。当時、セントルイス響の音楽監督を務めていた彼は、アメリカの一地方オーケストラに過ぎなかった同オーケストラを全米トップ・レベルにまで鍛え上げた指揮者として世界的に注目されていた。スラットキンとN響の相性は良く、88年、93年、96年、2000年、08年、12年と共演を重ねている。
「N響との関係は今年で30周年になりますね。私は、N響のスピリットが大好きなのです」
その後、スラットキンは、ワシントン・ナショナル響、BBC響のシェフを歴任し、現在は、フランス国立リヨン管とデトロイト響の音楽監督を兼務している。
「今は1年間に、デトロイトで16週間、リヨンで14週間、働いています。今夏は、シカゴ、アスペン音楽祭、タングルウッド音楽祭、ハリウッド・ボウルで指揮をして、リヨンに戻ります。でもこうした夏の過ごし方をするのは今年までです。来年からは夏には指揮をしないで、ゆっくりと過ごします。本を書いたり、作曲したりしたいと思っています」
11月9日のN響オーチャード定期では、ブラームスの交響曲第4番やラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を取り上げる。
「ブラームスは、デトロイトで交響曲ツィクルスの一環として録音しました。来年、リヨンでもツィクルスを行います。交響曲第4番は、構成が特別で、終楽章に変奏曲であるパッサカリアが取り入れられています。バッハの要素を取り入れたのです。第4番は、本当に一音たりとも変えようのない完璧な音楽です。ほかの3つの交響曲は長調で終わりますが、第4番は短調で終わります。そのエンディングは『この次に何が来るのか?』と問いかけているように聞こえます」
ラフマニノフの協奏曲の独奏は、2001年ヴァン・クライバーン・コンクール第1位のオルガ・ケルン。
「オルガはとても良い友人です。リヨンでは、一緒にラフマニノフのピアノ協奏曲全曲演奏も行いました。彼女と共演するときは言葉がいらないし、いつも新しいものをもたらしてくれます。私はこの9月で70歳になるのですが、リヨンでの70歳誕生日記念コンサートでもオルガは演奏してくれます」
マエストロは4ヵ月後にまた日本に戻ってきてN響と共演するのをとても楽しみにしていた。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
第81回 N響オーチャード定期
11/9(日)15:30 Bunkamuraオーチャードホール
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999
http://www.bunkamura.co.jp
*指揮者変更*
出演を予定していた指揮者のレナード・スラットキンが健康上の理由により来日中止となりました。
代わってクリスティアン・アルミンクが出演します。なお、曲目の変更はありません。