J.S.バッハと共に 渡邉辰紀 チェロ独奏

ベテランがいま改めて真摯に向き合う無伴奏チェロ組曲

(c)平舘 平

 東京フィルハーモニー交響楽団首席チェロ奏者として、いぶし銀の存在感を放つ渡邉辰紀が、東京で初の完全ソロコンサートを開く。普通なら「渡邉辰紀チェロ・リサイタル」と銘打つところを「J.S.バッハと共に」としたわけを、「私にとってバッハは神に等しいので、神と共に在りたいという気持ちをあらわした」とバッハへの畏敬を語る。

 コンサートでは無伴奏チェロ組曲から第1番、第2番、第3番の3曲が演奏される。映像で聴く渡邉の第1番プレリュードは、底鳴りのするチェロに深みがあり、渡邉の人柄を表すように、温かく心休まる響きに満ちている。慈愛に満ちた演奏が展開されることだろう。また、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」も演奏される。ヴァイオリンよりも遥かにサイズが大きいチェロで、速いパッセージや重音を弾くことは困難を極める。プログラムの最後にこの難曲を置いたことに、渡邉の自信と気迫が感じられる。名演を期待したい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年5月号より)

2023.5/27(土)19:00 かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
問:陽向企画Webサイト
https://youkouconcert.studio.site