第534回日経ミューズサロン クレシミル・ストラジャナッツ(バスバリトン) & 小川加恵(フォルテピアノ) デュオ・リサイタル

世界的バスバリトンの歌声で感じるシューベルトの息遣い

 クロアチア出身のバスバリトン、クレシミル・ストラジャナッツとフォルテピアノ奏者の小川加恵のコンビは、2021年のサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンでの瑞々しい演奏が記憶に新しい。ストラジャナッツはオペラの舞台にも立つが、現在はフィリップ・ヘレヴェッヘ率いるコレギウム・ヴォカーレ・ゲントのソリストを務めるなど、コンサートを中心に活躍する。一方の小川はオランダでの活動を経て、現在は日本に拠点を置く気鋭の奏者。最近では落合陽一や藤倉大とのコラボレーションを行うなど新境地を開いている。

 今回二人が取り上げるのはシューベルト歌曲の最高峰、「冬の旅」(全曲)と「魔王」ほか。小川が弾く、1835年頃にプラハで製作されたアントン・シュヴァルトリンクのフォルテピアノは、まさにシューベルトの生きた時代の息吹を伝えてくれる名器だ。その柔らかで温かみのある音色とストラジャナッツの深く豊潤な歌声が響き合い、悩める主人公の心の風景を繊細な色彩で描き出すことだろう。
文:後藤菜穂子
(ぶらあぼ2023年5月号より)

2023.5/26(金)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://stage.exhn.jp