思索と成熟を重ねる俊英の“いま”
1972年生まれのウィーンのピアニスト、ティル・フェルナー。個性的なピアニストを輩出することで知られる、スイスのクララ・ハスキル国際ピアノコンクールの93年の優勝者である。ウィーンのピアニスト、と聞くだけで我々は何かを期待してしまう。グルダ、デームス、バドゥラ=スコダの「三羽烏」やブレンデルなどの系譜に連なるピアニストであることを、だ。そしてフェルナーは伝統に安住することなく、輝かしい継承者となる道を着実に歩んでいる。
フェルナーと今回の会場であるトッパンホールとの縁は深く、2007年の日本初リサイタル、翌年から世界各地で並行して行われたベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲シリーズ、そして11年の、テノールのマーク・パドモアとのシューベルトの三大歌曲集を開催してきた。日本における本拠地というべきこのホールでのリサイタルは、モーツァルト「ロンドイ短調K511」、バッハ「平均律クラヴィーア曲集第2巻」(抜粋)、ハイドン「ソナタニ長調Hob.ⅩⅥ-37」、シューマン「ダヴィッド同盟舞曲集」という、ドイツ王道のプログラム。思索と成熟を重ねるフェルナーの、“いま”が聴ける。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)
11/5(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com