中木健二(チェロ)

キーワードは“ポリフォニック”

(C)Mirco Magliocca
(C)Mirco Magliocca

 東京オペラシティの人気シリーズ『B →C』。今回の中木健二は、2011年の遠藤真理以来、同シリーズに3年ぶりに登場するチェリストということでも注目を集めている。東京芸大を経て、パリ国立高等音楽院を首席で卒業した中木。05年のルトスワフスキ国際コンクールや、08年の国際フランス音楽コンクールを制し、10年から14年3月までフランス国立ボルドー・アキテーヌ管の首席奏者を務めた。「30代の活動の中心は室内楽を」という思いから帰国。現在は、室内楽のほかに紀尾井シンフォニエッタ東京のメンバーとしても活躍し、東京芸大の准教授として後進の指導にもあたっている。
 今回は名古屋の宗次ホールでも同一公演を開催。さて、そのプログラミングの意図は?
「リサイタルでは常に一貫性とストーリー性のあるプログラムを心がけています。今回はJ.S.バッハの音楽の特徴である“対位法とフーガによる対話”をテーマに、作曲家それぞれの構築性が際立った作品を厳選しました」
 前半はバッハの無伴奏組曲第5番で幕を開け、中木が今回のために委嘱した酒井健治の新作、リゲティの無伴奏ソナタと続くオール無伴奏。
「3人とも建築家や彫刻家のように音楽を立体的に構築できる作曲家。今回はバッハを作曲当時の調弦で演奏したり、リゲティを勢い任せではなく、緻密に理路整然と描いたりすることで、そうした魅力をお伝えしたいです。酒井さんの新作は、無伴奏チェロ作品では珍しいフーガ形式の小品をお願いしたので、出来上がりがとても楽しみですね」
 パリ留学時代からの友人でもあるピアニストの島田彩乃と共演する後半のデュオでは、ルトスワフスキの「グラーヴェ」と、ブラームスのソナタ第2番を披露する。
「ルトスワフスキ国際コンクールの課題曲でもあった『グラーヴェ』には、音のエネルギーが完璧に制御された作風にすっかり魅了されてしまいました。そして僕が最も好きなソナタのひとつであるブラームスの第2番。アキテーヌ管時代に彼の交響曲を全曲演奏した経験をいかしながら、そのポリフォニックな作風の核心に少しでも迫れるように頑張ります」
 昨年、20世紀フランス音楽で統一したデビュー盤『美しき夕暮れ』(キングレコード)を発表し、今後も録音を積極的に行っていきたいと語る中木。次回作の具体的な予定はないが、今回のプログラムにも含まれるバッハの無伴奏組曲には格別の思い入れがあるというから、近い将来に全曲録音をリリースしてくれるかもしれない。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

B→C(ビートゥーシー) バッハからコンテンポラリーヘ
10/18(土)18:30 宗次ホール
問:宗次ホールチケットセンター052-265-1718 
http://www.munetsuguhall.com
10/21(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
http://www.operacity.jp