愛知室内オーケストラ 2023年度ラインナップの聴きどころ

山下一史音楽監督との絆を深める2シーズン目に期待

 愛知室内オーケストラ(ACO)は発足20周年に当たった2022/23シーズンから定期演奏会をAとBの2シリーズに分け、それぞれ11回公演する体制を整えるとともに、山下一史を初代音楽監督に迎えた。

 2023/24シーズンも山下が両シリーズ各4回(計8回)を指揮、大きな存在感を示す。プログラミングはシューマン、シューベルト、ベートーヴェン、マーラー、ハイドン、モーツァルト、メンデルスゾーンとドイツ=オーストリア音楽の王道が基本で、アンサンブルの基礎トレーニングも同時に進める意図が鮮明だ。ベルリン・フィル首席のルートヴィヒ・クヴァントをドヴォルザーク「チェロ協奏曲」のソロに迎える第67回(B定期 12/1)はバルトーク、ルトスワフスキを組み合わせた東欧特集、協奏曲がメインの回にはスイスのマルタン、イタリアのロータなども手がけるほか、権代敦彦らへの委嘱新作の世界初演にも取り組むなど、多彩なメニューでACOとの絆を深めていく。

 A定期では指揮にクリスティアン・アルミンク、ピアノにフランク・ブラレイを迎える第57回(6/4)、鈴木秀美がハイドンの交響曲2曲(第26番「ラメンタチオーネ」、第60番「うかつ者」)とシューベルト「交響曲第1番」を指揮する第64回(10/6)、2015〜2020年に初代常任指揮者を務めた新田ユリが得意のシベリウス(交響曲第7番ほか)を特集する第68回(12/15)などが注目。B定期ではウィーン・フィルの首席ファゴット、ソフィー・デルヴォーがフランスのジョリヴェ「ファゴット協奏曲」、フィンランドのアホ「コントラファゴット協奏曲」を吹き分ける第56回(5/26)、独ドルトムント歌劇場音楽総監督代理の実力派カペルマイスター小林資典との共演で客演コンサートマスターの常連、石上真由子がベルクの協奏曲を独奏する第59回(7/1)、前回のモーツァルト&ハイドンから一転、リゲティとフォーレで臨む鈴木優人(指揮)&福川伸陽(ホルン)コンビの第65回(11/16)、ACOの弦楽器アドヴァイザーを務める川本嘉子(ヴィオラ)が大植英次の指揮でヒンデミットの「白鳥を焼く男」を独奏する第70回(2024.2/2)、ベルリン・フィル首席クラリネットのアンドレアス・オッテンザマーが指揮者として再登場する第71回(2/16)などが面白そうだ。

 定期公演に使ってきた名古屋市の三井住友海上しらかわホールは24年2月29日の閉館が決まっており、ACOは2月28日の山下指揮A定期(第72回)、権代の委嘱新作とモーツァルト最後の交響曲2曲(第40番&第41番「ジュピター」)で掉尾を飾る。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年2月号より)

問:愛知室内オーケストラ事務局052-211-9895 
https://www.ac-orchestra.com
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